音 楽 教 育 と D T M

兵庫教育大学 教授 鈴木 寛 1990年5月〜1992年12月


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この「音楽教育とDTM」はミュージック・トレード誌に1990年5月から2年半に亘って連載されたものをベースにしています。表現が現在の状況と合わないところは書き直したり補足したりしてあります。時々訂正・追加がありますので定期的にリロードして下さい。


目次


音 楽 教 育 と D T M

兵庫教育大学 教授 鈴木 寛 1990年5月


はじめに (1990-5)

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 DTM(デスクトップ・ミュージック)という言葉はDTP(デスクトップ・パブリッシング)という言葉の音楽版であることは言うまでも有りませんが、コンピュータ・ミュージックと呼ばれたそれまでの世界より広い領域を含んだ定義になります。
 コンピュータ・ミュージックといえばコンピュータを使って音楽を入力したり再生するという狭義のものから、コンピュータで作曲をしたり編曲をしたりするものも指していました。
 シュトックハウゼンやその他の前衛的な作曲家が、電子音を素材とした作品を発表する時もコンピュータ・ミュージックと言われてきました。
 コンピュータ・ミュージックとDTMの違いは、コンピュータ・ミュージックが単に演奏者の代わりをコンピュータが演ずるのに対して、DTMは音楽のデータをいろいろと処理する機能、つまり単に演奏するだけでなく編集したり、分析したり、時には編曲や譜面印刷等の機能をMIDIデータに対する処理として行えることであろうと思われます。譜面や楽器や演奏などの機能をすべて机の上のコンピュータのMIDIデータ処理で行ってしまえる所から、DTMと名付けられたわけです。
 一般に音楽教育は音楽教室という特別教室の中で行われます。この教室にはピアノという楽器と音楽鑑賞に必要なオーディオ装置が備えられているのが普通です。さらに五線が引かれた黒板と、防音(必ずしもそうではない)装備の壁や天井も必要とされています。また隣接の音楽準備室には様々な吹奏楽器や打楽器、アコーディオン等が所狭しと並べられ出番を待っていますが、隅の方か部屋の真ん中にある教師用の机は単なる物置か、コーヒーセットのサービス用に用意されている程度で、何のためのものかわかりません。
 DTMのセットは本来そこに置かれるべきものなのです。では、夢の音楽準備室のDTMセットはどんな仕事をするのでしょう。
 ある先生は近くある音楽会のための準備に頭を痛めているとしましょう。器楽合奏のための曲が見つからないのです。やっとの思いで見つけた曲は編成が古くて今の編成と合いません。Cで書かれたあるパートをBbに書き直したり、あるフレーズを易しく編曲し直したりしたいのですが、結果としてどんな音楽になるかもイメージできません。そこ で、例えば手元にあるコンピュータの電源を入れて、イメージスキャナーで元の楽譜を読みとりながら入力します。編集や修正は画面と対話しながらマウスをクリックするだけです。時には手に持ったマイクに向かってハミングするだけでその旋律が入力されます。結果はすぐに器楽合奏の音として演奏されます。行き詰まった時は、HELPキーを押すだけでアドバイスの画面に替わり、次にどうすればよいかのヒントをくれます。最終的にはきれいに浄書されたパート譜がプリントアウトされ、お手本の演奏イメージがMIDI音源から出されます。
 このように作成された教材曲はディスクにファイルされ、次回からは簡単に検索 したり出力したりすることができます。
 またある先生は明日の授業の教材のピアノ伴奏を電子ピアノやピアノプレーヤで演奏させるためのデータ打ち込みをDTMでやっています。
バイエルがやっとこさの先生も多いわけで、自分の弾けない曲でも性格に入力されておれ ば、自由なテンポや調で伴奏ができてしまうというのはたいへん重宝なことです。
 ひょっとしたら、生ピアノの演奏やオーケストラのCDから楽譜を採譜できるものも開発されるかも知れません。イメージスキャナーに楽譜を読ませるとすぐに音になって演奏されるソフトも出るかも知れません。電子オルガンの楽譜から自動的にアンサンブルの楽譜を出力することも可能でしょう。
 こんな風に考えると教師の能力を支援するCMI(コンピュータ・マネージド・インストラクション)としてもDTMは有効なツールになることがわかります。
 十分な数のコンピュータがあればCAI(コンピュータ・エイディド・インストラクション)として子どもに直接関わるツールにもなるでしょう。子どもにとって最も困難な学習は、楽譜と音の関係です。つまりイメージする音と音符の関係やその逆が、「ことば」を操るようにうまく行かないことに起因する障害となって音楽教育の行く手に立ちはだかっていたのですが、DTMによってそれも大変有効に解決されて行く例が兵庫県龍野市の揖保小学校の研究授業(平成2年月31日)でありました。
 既に全国の小学校や中学校にコンピュータが設置され、それを使った研究授業も算数や理科、社会なのではどんどん発表されていますが、やっと音楽も時流に乗ってきたという感じです。


《音楽教師の実態 前編 (1990-6)》

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 音楽教育に関わる職業は、音楽教師です。しかも、この人達の大部分は女性です。一般的に、女性はメカに弱いとされています。このことについて茨城大学教育学部附属小学校教諭の仁田悦朗氏は今年発表した学位論文の中で次のような調査研究をなさっています。 調査対象は茨城県下小学校の音楽科担当教師228名で、男女または免許の有無、年齢等によって異質の集団に分類したものですが、結論的には各集団間には有意な差が無かったので等質として処理されました。

質問@シンセサイザーで演奏した音楽を不自然だと感じたことはありますか?
  回答 78.95%は「いいえ」

質問Aシンセサイザーやコンピュータがあったら「こんなことをしたい」ということがありますか
    回答 62.72%が「はい」

質問B電子楽器を自由自在に使えるようになりたいですか?
    回答 89.04%が「はい」

質問Cコンピュータを使って作曲や音楽の演奏をしているのを見たことがありますか? 注(つくば万博は茨城県で開催された)
    回答 7.45%が「はい」!?

質問Dシンセサイザーやコンピュータの助けを借りて難しい音楽の演奏が出来そうだと感じたことかありますか?
    回答 35.53%「はい」

質問Eコンピュータで作曲したり演奏させたりできたら楽しいと思いますか?
    回答 62.72%が「はい」

質問Fコンピュータを使って音楽の勉強や遊びをしたり、子供たちにさせたことがありますか?
    回答 7.02%が「はい」

質問Gコンピュータを使って音楽の授業ができるなら、してみたいですか?
  回答 57.02%が「はい」

質問Hコンピュータは音楽の授業に役立つと思いますか?
  回答 44.73%が「はい」

質問Iコンピュータを使って学習状況を把握したり評価に生かしたり出来たらと思いますか?
  回答 76.75%が「はい」

質問Jワープロやコンピュータを使って、テスト問題や学習資料を作成したことがありますか?
  回答 42.54%が「はい」

質問K今後教師生活をしてゆく上でコンピュータやワープロは必要だと思いますか?
  回答 89.04%が「はい」

調査時期 平成元年7月

このような調査はかつて行われたことがなかったので、我々の予想に反するような結果がいくつか見られます。しかし、最後の質問に対する回答は殆どの教師がコンピュータを避けて通ることは出来ないと考えていると思っても間違いではないということです。
 この調査から解ることは「音楽」と「コンピュータ」の関わりや、「教育」と「コンピュータ」の関わりについての知識や認識がまだまだ未成熟であるということです。質問のEGIはコンピュータに対する期待の高さを表している反面DHでは自分にはその能力が無いと思う教師が多いことを物語っています。しかし、BIでは自己改革の目標としてディジタル機器が操れることを望んでいることが分かります。しかも、Aではしたいことがある教師が半数以上に上がることが分かります。
 以上のことからピアノであれ声楽であれ自分の過去の経験や学習には無かったものであるにも関わらず殆どの教師がコンピュータに対する期待や必然性を認めていることが分かります。
 教師の世界にとって「新しい」というのは、方法と内容の他に「意義」のような価値的なものも含まれますので、特にDTMのような場合その意義をはっきりしておかなければなりません。
 鳥が空から見る図を「鳥瞰図」と言いますが、これはどちらかと言うと男性的な発想で、女性の場合は「虫瞰図」つまり、地を這う虫が見る世界のように目の前の状況の連続の把握と言うパターンが普通です。
 その証拠に子供が学校から持って帰って来る家庭環境調査簿の家族構成やその他の部分は母親が書きますが、家から学校までの地図はどこの家庭でも父親か男の子が書くことでも分かります。つまり女性には鳥瞰図的発想が難しいのです。その反面女性は「手順型」の発想に優れていますからその意味ではコンピュータのプログラム等は女性向きであると言えます。
 女性差別ではありません。質の違いを言っただけで、どちらが優れているとか言う問題ではないのです。男類と女類というふたつの生き物が互いに補いあって初めて人類と言う存在になるということなので、男も女も同じなら夫婦や恋人などは無意味になると言うことで一応弁解はしておきます。
 冒頭に述べたようにこの調査では年齢や性別では有意差がありませんでしたので、教師という職業意識の上では男女差や年齢差はコンピュータ等の機器に対しては無いと言うことが出来ます。
 寧ろそれより「性格」的なものにより回答の差があったと考察されます。 女性だからコンピュータやシンセサイザーは無理というのは男性の偏見と誤解以外の何物でもないと言うことを御理解いただきたいのです。


《音楽教師の実態 後編 (1990-7) 》

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 古来タイピストと言えば「女性」のイメージでありました。ピアニストも現代ではやはり「女性」のイメージです。指先の器用さや記憶の正確さ等は女性特有の分野であり、反復や訓練によって支えられている部分です。このような学習パターンを私は【L型】と呼んでいます。Learnの頭文字をとったもので、丸暗記や練習、訓練等によって形成される学習のパターンです。
それに対して、【S型】と言うのが考えられますが、Studyの頭文字をとったもので、物事の原理や法則を考えながらいわば研究しながら学習するパターンです。
 【S型】がソフトウェアなら、【L型】はユースウェアと言うことが出来ます。  女性の会話は直接話法が多く、人が話した通り表情豊かに話します。話した内容を正確に伝えるため話し方を忠実に再現することを大切にします。このことは女性がハウ・ツーにこだわっていることの証拠で、音楽に於いても楽譜の正確な再現や運指にこだわる【L型】が多いと考えられます。男性は間接話法が得意なように、人の話したことを要約して簡単に話すことが多く、それほど表情豊かではありませんが、内容にこだわる【S型】が多いと考えられます。
 DTMの場合、「何が」できるのか、にこだわるタイプ即ち【S型】と、「どうするのか」にこだわる【L型】ではすでに構えが違うことにお気づきでしょう。どちらも「したいこと」はあるのですが、その内容にこだわるか、手続きにこだわるかで、受け入れたり、拒絶したりするのです。
 全国の小中学校におけるコンピュータの設置率が、それぞれ21%、44.8%という1年前の状況が今年度は100%を目標に文部省が予算化していますので大幅に改善されるとして、実際に学校に導入されると、「とりあえず」ワープロとして使われたり、成績管理のために使われるのが普通でしょう。この分野の使用についてはもはや誰も拒絶したり反発したりすることは無いと思われますが、入力や出力の手続きはやはり、「得意な」先生に任せるケースが多いと思われます。この「得意な」先生が【L型】の場合、受け身的ですので市販のアプリケーション・ソフトに依存する傾向が強くなり、ソフトの増加と共に特定のソフトつまり使いやすいものに偏る傾向が生じます。しかもソフト間の脈絡や、共同利用のための時間配分などには注意を払いません。やがては半ば私物化した形で使わない先生や使えない先生を排除してしまいます。
 もし、この先生が【S型】ならば、創意工夫が得意ですので学校の全体構想から、コンピュータをCMIやCAIの観点で目的別にソフトを充実させるでしょう。自分の得意の教科に拘らず、系統的なライブラリーや使用方法を考えるでしょう。
例えば現在ワープロ・ソフト一つをとってみても「一太郎」をはじめ「新松」、「P1−EXE」等実に様々なものがありますが、【L型】の場合他のソフトとの互換性を考えてFEP(フロント・エンド・プロセッサーと呼ぶ日本語辞書環境)を最も利用しやすいものに統一することを考え、ATOK7やVJE等が扱えるソフトを中心にライブラリーを構築するでしょう。
 私は【S型】なので目的に応じて色々なワープロを使っています。通常は富士通のOASYSを使っていますが、この原稿のように1行が19文字のような特殊なものでは一太郎、図や表が多い時は花子やシルエットを使い、プリントアウトは48ドットの高速プリンタ用にどんなワープロの原稿でもMS−DOSのテキストファイルにして印刷しますが、入力用のキーボードは親指シフトのものに統一しています。
 つまり、【L型】は「靴に足を合わせる」環境適応型、【S型】は「足に靴を合わせる」環境創造型であるとも言えます。
 現在たくさんの市販DTMソフトが出回っていますが、そのどれを利用するかを決める時に環境適応型で決めるとすべての教師や生徒に共通のシステムが構築できますが、個性や目的に応じた柔軟さが犠牲になります。このタイプでは編曲や作曲等の創意工夫の部分をDTMに依存するのが普通です。環境創造型で決めると無駄な重複や欠落が生じますが個性や目的に応じたシステムを構築できます。このタイプでは楽譜の浄写や自動演奏等の分野でDTMのご厄介になります。
 フリーサイズの靴があればよいのですが、現状では望むべくも有りません。ハサミで紙は切れますが、木は切れません。ノコギリで木は切れますが薄い紙は切れません。
 結局は別々のツールとして必要に応じて使い分けをしなければなりませんが、最近ではこのような別々のツールでつくったファイルをMS−DOSのテキストファイルのように共通に使えるDTMソフトが増えてきました。
 ハードウェアに対する基本的な適応力は【L型】の方が優れていますが、応用力や使い回しは【S型】の方が優れています。
 学校にこの両方のタイプがバランスよく居る場合は理想ですが、女子教員が増加の一途をたどる我国では次第に【L型】が増えているのも事実です。

【L型】の教師は@受動的、A保守的、B消極的、C計画的、D集団的、E規格的F着実、G頑固で(一徹ではない)、H手順型で、I努力型です。

【S型】の教師は@能動的、A革新的、B積極的、C突発的、D個人的、E独創的Fムラがあり、G柔軟で、H場当たり的ですが、I応用力があり工夫が得意です。


《子どもの実態 前編 (1990-8)》

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 ファミコン世代と呼ばれる現代の子ども。新人類と呼ばれる現代の若者。テンキーやマウス、ジョイスティック等を易々と使いこなす彼らの姿を誰が予想できたでしょうか。彼にとってコンピュータはもはや玩具であり、鉛筆や消しゴムと同じ文具なのです。麻雀屋から若者が姿を消し始めた頃からファミコンが売れ始め、塾が全盛を極め始めた頃から「仲間遊び」が出来なくなった子どもがファミコンを始めたのです。 いわばこの現象は社会環境が作りだしたものであるとも言えますが、元来子どもはその生まれてきた時代環境が、基本的な生活習慣の原点となっていますので、子どもの文化はその時代によって刻々と変化しているとも言えます。
 「仕掛」や「からくり」はどの時代にも存在していましたが、「インテリジェント」な仕掛は存在しませんでした。学習内容の増大は今の子どもにものすごい負担を要求しています。しかし、どの時代の子どもも生来持っている能力は同じですから当然自分で抱えきれない部分は「仕掛け」に頼らざるを得ません。算盤が電卓に置き変わったように、書物がCD・ROMや光磁気ディスクに置き変わるのを止めることはできません。一日が24時間であることを誰も変えることは出来ませんが、その中の機械的作業に費やされる 時間を「仕掛け」を使って短縮することが現代的な人間性なのです。
 学校や塾で学習する子どもたちは、多くの場合機械的な記憶や訓練に悩まされています。極論すれば日本の学習体系は東大を頂点とする【L型】に有利な記憶中心の実力社会なのです。何をどれだけ正確に記憶しているかで人格が判定されるというこのシステムが子どもから創造性や個性を奪っていることは自明のことであります。

知る→わかる→できる

と言うのが学習の望ましい変容であり、知っていると言う部分だけを評価する入試システムは知識や技術偏重の教育に拍車をかけているに過ぎません。勿論、知識や技術は不要であるといっているのでは有りませし、それがなければ何も始まりません。
 しかし、今の世の中では知識や技術の大部分はコンピュータによって置き換えることができます。いわばデータとして利用できるのです。問題はデータがいくら膨大でもそれを「情報化」することができなければ「本を背負ったロバ」の例えのように自分では何も利用することができません。
 【L型】教育はそこで完結してしまってはいけないのです。
  わかるということは物事が分類できるとか、一般化できるとか、法則化できるとか、価値づけるなどの行為によって実現します。これは膨大なデータを編集し、組み替え再編を行うことであり、単なるファイル変換では有りません。そこではデータが新しい意味を持ち、新しいデータに生まれ変わるのです。
  日本の音楽教育ではこのわかると言う部分が殆ど有りません。例えば、ハ長調の音階はドレミで完全に憶えますが、それが他の調でも平行移動していることは理解させようとはしません。その結果子どもたちは調号アレルギーになってしまい、音楽の授業が嫌いになります。長調のミとラを半音下げたら短調になるという原理を習いませんから短調は難しいものと言う気持ちが転調の学習を妨げます。現に市販のDTMソフトでメジャーをマイナーに、あるいはその逆をやってくれるものはありません。
  DTMが単にデータの忠実な再現をする「仕掛」に終わるなら学習的な意味合いは殆ど有りません。アーティキュレーションをデータ化しても「何故」そうするのかを学習出来なければDTMを音楽教育に取り入れる意味合いは薄くなります。
 【L型】は手順型だ、前に述べましたが音楽は時間軸上に並べられた音符データの手順型シーケンシャル・ファイルに過ぎないわけで、その入出力の手順をDTMでマネージしているのが現状ですから、音楽教育にDTMを導入することは益々【L型】教育に拍車をかけることになります。
 もしDTMのソフトが単に手順通り入力すれば音楽になるというものではなく、音楽の仕組みや曲ごとの違いを考慮しながら、言い替えればわかりながら入力したり再現したりするものであれば【S型】の学習を展開することができ、その教育的意味合いは非常に大きなものになるでしょう。
 しかし、もっと大きな問題は知っている、わかっているとしても、それを自己実現や自己発見の手段としてできるという行為にまで高めることを忘れてはならないということです。
 個性化や個別化が、今叫ばれています。何を個別化し、何を個性化するのかということが明確でないまま言葉だけが一人歩きしょうとしています。個性化されるべきことはは学習内容や学習目標であり、画一化され規格化された今までの学習に対する反省の結果であります。又、個別化されるべきものは学習方法であり、学習時期や学習時間であり、これも一斉授業や等速授業による落ちこぼれ続出の反省からきたものです。DTMに限らずコンピュータを導入することにより学習の個性化や個別化は大いに前進することが予想されます。
 DTMが目指す音楽教育はそれぞれの子どもの能力や実態に即した個性的で創造的な学習と個別的で合理的な活動手段を保証することであり、今までの音楽教育の欠点を補うシステムなのです。


《子どもの実態 後編 (1990-9)》

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 かつて学校は地域の文化センターでした。そこには一般家庭には無い、時代の最先端を行く機器や設備があり、目指す文化や文明に対するビジョンが示されていました。
 しかし、今の学校は時代遅れの機器や教具そして、教材しかありません。そこには未来を予測させるようなワクワクするドラマがないのです。
 子どもの意欲は元来旺盛です。そして、元来子どもは活動的です。子どもの「好奇心」や「興味・関心」を刺激しない教材や教具はただのガラクタです。興味や関心の無いことは持続しません。又、課題意識の無いことは発展や進展がありません。
 例えば「ドラクエ」と言うゲームソフトには今度こそという課題意識を起こさせる配慮があると同時に、諦めたり失望したりしないためのサービスも随所に用意されています。

子どもが意欲的な時には 

楽しむ

工夫する

冒険する

共同で助け合う

耐える

 と言うような行動が見られます。 ファミコンに熱中する子どもには必ずこのような行動がみられますが、音楽の授業中にこのような行動を自発的に示す子どもは少ないのです。  それは多分に教師主導型で、子どもの自発性や主体性を阻害している授業が多いためであろうと思われます。音楽の教師がその演奏技術において優れているほどこの傾向は強いように思われます。日本の音楽教育は音楽の専門家の養成を目的としていません。にも拘らずあたかも専門家に要求するような知識や技術を調教師のように機械的、かつ隷属的に訓練するような授業が楽しいわけはないのです。
 現実に日本の小学生は低学年においては音楽の授業を一番好きな教科として挙げていますが、高学年においては大嫌いな教科のナンバーワンになって仕舞うという実態があるのです。
 まして、中学校においては述べるまでもありません。かつて荒れる中学校が問題になっていましたが、最初に荒れるのは例外無く音楽の授業からだったのを思い出して欲しいのです。
  何故彼らは荒れるのでしょうか。誰でも目的もなくまるで猿回しの芸のようにやらされることは好みません。興味も関心もないことを学習したいとは思いません。味わうと言うこともなく詰め込まれては自我を確立しようとしている時期にある彼らの青春が反抗と言う行動に出ても仕方が無いことなのです。
 これは教師批判ではありません。音楽が音と言うものを素材にしている以上個々の生徒が出す音はそれが個性的であればあるほど他の生徒の音楽の邪魔をし、音楽教室は騒音のるつぼとなってしまうことをどんな音楽教師も知っているのです。ですから全員で同じ音を出さざるを得ないという物理的な問題を解決する方法が今までは無かったことが原因だったと言えます。
 電子音源の出現はこの状況をガラリと変えてしまいました。つまりヘッドホンが利用できることにより、他人の音の干渉を受けることの無い音楽環境が可能になったわけです。たかがヘッドホンされどヘッドホンと言うわけで今世紀の音楽教育における最大の革命はこのヘッドホンによる閉回路環境です。
 ウオークマン世代の今の子どもたちにとってヘッドホンは当たり前の音楽環境なのです。DTMは音源に電子楽器を用いますから個性化、個別化にはピッタリの機器であることはもうご理解いただけるものと思います。
 文字を学ぶ前にすでに子供たちは日本語を話したり聞いたりできます。文字を学ぶことで更にその言語能力は伸びるわけですが、基本的には自分の生活に必要な言語が優先されます。中学校で3年間、高校で更に3年間、大学で1年以上も英語を習っても英語が話せない日本の語学教育が如実に物語っているように、日本の音楽教育も屍学か、腐学なのです。生活感のないものや自分に関係の無いものは能力とはならないのです。
  彼らの生活が要求する音楽は、@孤独感を癒してくれるもの A刺激のきついものBストレスを解消してくれるもの C自分を高めてくれるもの D時間に充実感をあたえてくれるもの E共通の仲間とのコミュニケーション等であり、なぐさめやカタルシスであり、崇高なカリスマや、共通語でもあるのです。これは音楽のジャンルを問わず共通しています。
 既に巷ではMIDIによる音楽情報のネットワークが動き始め学校には無い彼らの世界が確立されようとしています。
 どのような形であれ、本来音楽好きな彼らの欲求を満たすにはDTMのような非支配的で、非管理的な環境と、職業音楽家の独占物の分け前に与ると言う快挙が必要なのです。芸でもない術でもない、当たり前の文化として、音楽と係わり合えることは人類の夢であったはずで、その環境が保証されてこそ言語が「詩」になるように、音が「音楽」になるのです。
 そのためには、DTMのハードやソフトの思想が吟味されなければならないことは言うまでもありません。


《海外DTMの現状 (1990-10)》

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 1990年の夏私は海外で勉強するチャンスがありました。特にフィンランドのヘルシンキで開催されたISME(国際音楽教育会議)では電子技術と音楽教育についての発表が注目を浴びていました。アメリカからはカーネギー・メロン大学の「初心者のためのピアノ指導に於けるコンピュータの利用」というテーマでロジャー・ダンネンバーグらの手で完成されたAIソフトが紹介されていました。このソフトは既に昨年彼自らの紹介で日本に持ち込まれたもので、私も現場に立ち会ったのでよく記憶しているものです。予め作成されたデータにより自由なテンポで演奏されるMIDI楽器に自動的に伴奏が付けられるというものでありました。現在演奏されているデータの前後8個のデータを常に監視してテンポのズレやミスを自動的に補正すると言う面白い企画です。初心者に有りがちなテンポのズレやミスタッチをAIが承知して付き合ってくれるのは指導システムとしては大変望ましいものです。この種の研究は例えば私の大学や鳴門教育大学などの実技(ピアノ)指導システムとして既に実用化していますが、テンポのズレに関してはお手上げです。ビデオによる紹介でしたので多くの参観者にはよく理解できなかったようですが、ロジャーの基礎研究をよく知っている私には発展システムとしてのこのソフトの高い完成度を感じました。
 英国ではここ2年ほど前から義務教育のなかに音楽教育を組み入れる努力が行われています。現在国連加盟国の7パーセント位しか、義務教育で音楽を教えていません。
 勿論アメリカやフランスなどでは当分望むべくもありません。音楽教育先進国日本に習って英国では目下カリキュラムの整備を行っているのですが、その中に「情報音楽」即ちコンピュータ・ミュージックが位置づけられようとしています。発表によると「テクノロジー・バス」と名付けられたバスにハイテク機材を積み、各小学校を巡回するというもので、同様のシステムはスエーデンにもありますが、現在8台運行中です。リコーダーなどの伝統的な楽器も用いますが音楽そのものの現代化に対応するために新しい音素材としての電子楽器と、指の運動に依存しないコントロール系としてのコンピュータの利用が目玉です。
 小学生の頃からコンピュータを使った教育を盛んにやっている国ですから子ども達にとって何の抵抗もないことをしきりに力説していました。
 会場となったシベリウス音楽院にも音楽学の講座の中にコンピュータ・ミュージックの講座が含まれていましたが、音楽学とコンピュータの関係については何もありませんでした。その点ではシンガポール大学のように単位と関係なく音楽にかかわる全ての学生に機器の提供をしているシステムの方が進んでいるように思われます。シンガポール大学の音楽課外活動センターではMIDIの壮大なシステムが構築されており、マッキントッシュやアタリをメインフレームとしたネットワークが稼働中です。
 さて、ISMEの発表に話しを戻しましょう。殆どの発表者が使用した機材はIBMまたはマッキントッシュ、アタリで音源は例外無くローランドのMT−32Dでした。しかし、残念なことにソフトに関してはマニュアルの説明から一歩も外に出ておらずはたしてそれを研究発表と称しても良いのか疑わしいものばかりでした。オリジナルなソフトは皆無で全部既存のアプリケーションに頼っていました。一つ目立ったのはCD−ROMによる教材の発表があったことです。これはオーストラリアの発表でしたが、自作の教材とコンピュータを結び付けて音楽の中身を楽譜や映像(静止画)とシンクロさせるというもので音楽教育に於けるDTMの新しいメディアを感じさせるものでした。既に日本でもリットー・ミュージックとNECの共同開発による廉価なCD−ROMシステムが間もなく発売されますが音楽教育用のソフトも提供して欲しいと思います。
 音楽教育に於けるDTMの思想には巨大なデータベースというものが考えられますが、その分野ではCD−ROMに勝るものは無いでしょう。
 さて、ISMEの後私はオランダのアムステルダムにあるSTEIMと言う研究所(国立)を訪問しました。日本ではまだ無名のこの研究所はフランスのIRCAMかそれ以上のブレーンで構成されており、アバンギャルドのライブパフォーマンスを目的とする様々なMIDIコントローラの開発をしていました。白黒鍵盤やコンピュータ・キーボードに頼らない新しいコントローラーは義手のような形のものや蜘蛛の巣のような物など実にユニークで、パフォーマンスと言う観点から考えても十分音楽教育に示唆を与えてくれる物でした。
 音楽や音にはパターンというものがつきものですが、このパターン認識の研究ではカナダのマック・ギル大学のペニーコック等のものが大変進んでいるようです。

これらの研究を要約すると、
@音を音符化する。
A音符を音楽化する。
B音楽のパターンを情報化する。
Cアイデァを情報化する。
D音楽とその内容情報をデータ・バンクとする。
E演奏者と音楽情報をインターフェイスする。
F音楽教育に必要なシステムを研究する。

等になります。この内いくつかは既にアプリケーション・ソフトとして市販されていますが最も重要な部分についてはこれからです。 


《ハードウェア編 1 (1990-11)》

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 ご存知の通り、現在DTMのためのアプリケーション・ソフトは殆ど特定のハードウェアに依存しています。日本だけの特殊事情として日本電気や富士通、東芝、日立等のコンピュータが、個人ユーザーから企業のオフィスに至るまで浸透し、更に学校にまで普及しようと伺っているのです。所がこれらのコンピュータの殆どが日本の中でしか通用しないと言う現実があるのです。これは性能の問題ではなく「日本語」を扱うという日本の特殊事情と密接な関係があるからです。 海外では圧倒的にIBM、マッキントッシュ、アタリ、アミガ等のハードウェアが使われており、それらの機種の間ではデータやプログラムの互換性が保たれています。日本でもヤマハがC1(現在は廃番)というミュージックコンピュータを発売していますが、海外のハードやソフトとの互換性では大変優れている反面、NECや富士通等との互換性が配慮されていないため日本のユーザーは手持ちのハードウェア以外に海外版のためのハードウェアを追加しなければならず、ユーザーの数は増えません。PC−9800シリーズのユーザーの殆どは「一太郎」や「花子」等のワープロソフトのような日本語を使用するソフトを利用しています。
 最近はMSWINDOWS(Windows95が最新)等のOSが利用されるようになりアルダス社のページメーカー(現在はAdobe社)やマスター・トラック・プロ等のように初めからMSWINDOWSの環境で利用する海外版のソフトもPC−98シリーズの上位機種では利用できるようになりました。これからも色々な海外のソフトがMSWINDOWSの環境で利用出来るようになるでしょう。しかし、これらの環境を利用するためには本体のCPUが80286か80386(現在は80486よりさらに上位のPentium)という16〜32ビットの高速マシーンを購入するだけでなく増設メモリーやハードディスク等の高価なオプションを用意しなければならず、レーザープリンターまで考えると、マッキントッシュのフルシステムが買えるほどの費用が掛かってしまいます。
 しかもハイレゾリューションのような緻密な画面環境を設定すると市販のミュージックソフトの殆どが割り込みチャンネルの競合のため利用出来なくなってしまいます。例えばMTP(マスター・トラック・プロ)等は本来ハイレゾリューシュンで編集画面が最適に表示されるようになっていますが、ローランド社のMPU−PC98をインターフェイスとする場合、マウスインターフェイスとINTつまり割り込みチャンネルが競合してしまい最高級機種でもノーマル・モードでしか利用できなくなってしまいます。スポーツカーで市街地を走っているようなものです。
 もう一つの問題は、MIDIの標準規格の不統一というものです。IBMやその他の海外のメーカーはMIDI規格をスタンダード化することに成功しました。
 所が、日本ではMIDI信号すら標準化されておらず例えば、ベロシティのデータがA社とB社で違うためA社のデータでB社の楽器を鳴らすと途轍もなく大きな音が出た りその逆の音が出たりするのです。(1996年現在これらの問題は標準MIDIファイルやGMと呼ばれるMIDI規格で解決され、さらにZIPIという新しい規格も検討されている)
 標準音源の規格も統一する事が難しく、同じプログラム番号でも違う音が音源ごとに設定されている現在では、常に音色リストを見ながらプログラム番号を再設定すると言う作業が必要になります。
 DTMをやりたいのですが、どんなシステムを購入したら良いでしょうと聞かれると大変困ってしまうのはこんな事情があるからです。音楽情報誌等には毎月新しいDTMソフトが紹介されています。中には12万円もするソフトから、一枚150円程度のブランク・ディスクに簡単にコピーが出来てしまう物もあり、車選びと同じで用途に応じて揃えて行かねばなりません。
 ということは、どんなハードを買うかと言うことは、どんな仕事をしたいかで変わって来るのです。しかも、仮にぴったりのものがあっても、マニュアルが全部英語で書かれているため結局使えなかったと言うような事が私の回りでもよくありました。現実に存在するかどうかは別として、音楽教育の為に利用するハードウェアは次のような条件で選ぶのではないでしょうか。

【サイズ】 小さいほど良い。オール・イン・ワン型の物か、ラップトップ型の物が良い。しかし、拡張性やカラー表示等で制限が多いのは覚悟しなければならない。

【価格】 安いほど良い。同じ海外版でもマッキントッシュよりアタリやアミガの方が格安である。この差はCPUやメモリの大きさから来ると考えられる。

【CPU】 68系か86系かと言う事になる。結論から言えば68系の方がコンピュータらしい。86系(NEC等)は電卓を高級化したようなものでコンピュータとしては無理をしている。

【ディスプレー】 美しくて緻密であるに越した事はない。しかし、国産のソフトは前に述べたようにハイレゾ・モードでは動かない。マッキンの画面は美しいがモノクロが一般的。カラー化すると猛烈に高くなる。それなら国産のシステムの方がほかの物にお金が回せる。

【スピード】 早いに越した事はない。H98では33メガ(現在では100M以上が常識)と言う信じられないようなスピードで動く。バラード等のソフトで「しばらくお待ちください」というメッセージが出ることがあるが、リアルタイム入力した時には数時間も待たされることがある。このことを考えれば早い程良い。


《ハードウェア編 2 (1990-12)》

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 ハードウェアをDTMのための独立した一つのシステムとして考えるか、今自分が持っているシステムにDTMのシステムを組み込むかでハードウェア構成はかなり変わってきます。
 マッキントッシュやPC−98等の場合はEXCELやマルチプラン等のいわゆるカルク機能、ページメーカーやワープロソフトによるDTP機能等をメインにしたハードにMIDIインターフェイス(MIDIのおしまいのIはインターフェイスの略なのでニュー新幹線と言うような感じになってしまいますね)等を追加してDTMの機能を持たせる事が出来ますが、C1のようなものでは日本語対応していませんし、MSDOSが走ると言いながら前述のようなソフトは無理です。
 学校における音楽教育に携わる教師に必要なコンピュータの機能を考える時DTM専用機と言うのはかなり不便を感じることでしょう。
 将来的には【通信機能】等も必要になってきますので、それに対応した機種を選ぶ必要もあります。そこで目的に応じたシステム構成を考える必要が出てきます。

@テストの集計や成績管理もしたい。
 この場合通常のコンピュータ機能が完備されていることが必須です。CPUは将来に備えて16ビットの286か32ビットの386位のものになります。MIDI等のインターフェイスを拡張する場合に備えて拡張スロットは最低でも4枚は挿入出来るものが望ましいでしょう。マークカード・リーダー等も使用する事が考えられますのでRS232C等のインターフェイスにも対応していなければなりません。ディスプレーは高解像度のものでなければDTMの楽譜画面に対応できませんし、カラーの方が情報量が多いので良いでしょう。同様にプリンターも48ドットまたはレーザープリンターのような高解像度のものが必要になります。また、当然のことながら毎回フロッピーディスクからソフトを立ち上げるというような原始的な作業は出来ませんから最低でも20メガ程度のハードディスクが必要になるでしょう。トータルでは60万から100万円の予算(ソフト抜き)が必要となり、それにDTM関係のハードやソフトを加えますと百万円プラスマイナス30万円は覚悟しなければなりません。

ADTMだけに使いたい
 この場合は、オールインワンのシステムが良いでしょう。しかし、オールインワンと云えどもプリンターは外付けの場合が多く、ましてミュージック・キーボードや音源は当然外付けとなりますのでかなりのスペースが必要となることは覚悟しなければなりません。しかし、ミュージック・キーボードが不要ならマッキントッシュのようなモデルが想定できます。この場合でも楽譜印刷に主眼を置いたシステムではレーザープリンターが望ましく、それにかなりの予算をかけなければなりません。音楽教材の作成が目的なら音源やオーディオ・システムにかなりのお金をかけなければなりません。予算的には前のものと殆ど変わらないでしょうが余分な手続きや周辺機器が不要になりますのでスッキリしたものにしあがるでしょう。

B徹底的に音楽機能だけに絞る場合。
 音源とオーディオ・システムに高機能のシーケンサがあれば成立します。最も安価でシンプルですが、楽譜印刷やディスプレーの機能は望めません。しかし、学芸会用のBGMを作る程度の作業しか想定していない場合はこれで十分でしょう。例えばヤマハの指導用オルガンSE−5000にはシーケンサが内蔵されていますのでこれ一台でしかも20万円を切る価格ですから簡単に利用できるでしょう。

C音楽指導で生徒達に操作させたい。
 この場合、生徒一人か二人に一台操作させることを想定しています。小学校では楽譜や創作の学習に、中学校ではアンサンブル編曲や作曲に、高校では作曲以外に合唱や合奏の補助、編曲等の学習に用いられることを想定しています。文部省予算で高校から小学校に向けてコンピュータの設置が進められている状況ですから全ての教育機関にコンピュータが設置されるのは時間の問題となっています。小学校ではLOGOのようなシンプルな言語でゲーム感覚のCAIが可能なソフトが既に利用されています。音質や表示画面に贅沢を云わなければワンセットで二十万円位から設置できます。当然ながらプリンター等の周辺機器は共有とすることを想定しています。中学位になれば「みゅーじ君」やその他のソフトの利用も考えられますので本格的な機能を有するコンピュータとローランドのCM−64のような音源を必要とするでしょう。ヘッドホンを使った場面が多いでしょうからオーディオ装置は共用で良いでしょう。ただそれらの装置を音楽教室に設置するほど豊かな学校はありませんから他の教科とも相談してシステム設計をする必要があります。

Dまず自分が研究してから導入したい。
 この場合は基本的にMSDOSやMIDIの概念を把握しなければとんでもないものを買って後悔することになります。私の友人は何も知らずに人が勧めるままマッキントッシュをいきなりフルセットで買い、ソフトのマニュアルが全部英語で書かれていたため何も出来ない状態のまま現在に至っています。もし、多少なりとも知識が有れば例え英語のマニュアルでも想像で読めたと思うのです。最初は色々な所に出向いて他人のソフトやハードで経験することをお勧めします。


《ハードウェア編 3 (1991-1)》

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◎専用機か汎用機か。
  現在のところDTM専用のコンピュータは殆ど有りません。文書作成専用のコンピュータはワープロ(この省略は生理的に気持ちが悪い。ワードプロセッサーと呼びたい)と言う形ですっかり定着しています。このワープロ!とコンピュータの違いは文書やプログラム・ファイルのアクセスが専用か汎用かの違いがまず一番に挙げられます。つまり、文書作成・更新・保存・印刷といった一連のファイル操作をコンピュータを意識すること無くメニュー選択で行えると言う点です。このことはコンピュータの知識(勿論フロッピーディスクの裏表とかの最低限の知識は必要ですが)が無くても誰にでも操作できると言う、言い替えれば専門的知識や技術をソフト及びハードが代用してくれるという親切さが初めから組み込まれているのがワープロの利点で、逆に文書データや数値データをきめ細かく利用しようとするとコンピュータのようなDOS環境が必要となり不便を感じるわけです。
 勿論最近のワープロでは、カルク機能や通信機能を持った物もあり、随分コンピュータよりになってきましたが、同じカルクでもマルチプランやエクセル等とは動作速度や記憶容量では極端に差が出ます。
 一太郎・桐・P1EXEなどのコンピュータ・ソフトではMSDOSを介してデータの交換や変換が可能ですがかなり専門的知識が必要となります。将来すべての学校にコンピュータが導入されるわけですが、その場合でも専門的知識を有するグループとそうでないグループに分かれるのは避けられない現実でしょう。
 更に、現在ワープロの入力方式には
 @ASCII規格ローマ字入力
 AJIS規格カナ入力
 B親指シフト入力
 CJISコード入力
 Dタッチパネル方式
 E手書き入力
等の方式があり、誰でも得意の入力方式で入力していますが、ひとりで幾つもの入力方式を駆使できる訳では有りません。
 現在の入力方式ではBの親指シフト方式が最も優れていることはワープロ検定やワープロ・コンテストの上位入選者の殆どがこの方式であることからもわかります。
 しかし、この方式を取り入れるには、それ専用のキーボードとその操作を新しく学習しなければなりません。ローマ字入力は親指シフトの2〜3倍の動作を要求しますので作業能率や疲労の点以外にも、思考が妨げられる等の欠点があるにも拘らず、導入の簡単さから殆どのワープロがこの入力方式を採用しています。つまり26文字憶えるか、50文字憶えるかの選択をメーカーが既に決定してしまっているわけです。
 このように専用機にはメーカーのコンセプトに係わるある作業手順が固定化されていて、ユーザーは「靴に足を合わせる」ような妥協を強いられていることが多いのです。
 DTMソフトに於いても、入力方式は
 @コンソール・キーボードによる方式
 Aミュージック・キーボードからの手入力
 Bステップ入力
 Cマウス入力
 DMIDI信号入力
 Eカーソル入力
 F光学読みとり装置による入力
等が現在使用されていますが、音楽の流れを妨げない入力方式はAのミュージック・キーボードからの手入力です。しかし、そのためには充分な鍵盤演奏能力が必要とされ、そのような技術を持つ人にはDTMを必要としないという思想から殆どのDTMの入力装置はMIDIキーボードか、タイプキーによるものとなっています。

◎夢のDTMハード
●楽譜をスキャナーでトレースするだけで入力出来ないだろうか。
 現在それに近い製品は「読みとり君」の商品名で市販されていますが、制限が多すぎるのと精度が高くないのとでとても実用品とは言えません。単語の上をなぞるだけで入力できる英和電子辞書があるくらいですからできると思うのです。
●手書き入力装置でハンディなものは出来ないだろうか。
例えば電子手帳の大きさで乗り物の中でも専用ペンで手書きすればMIDIデータに変換され、その場でヘッドホンで聴ければさらに面白い。
●生演奏か、その録音をMIDIに変換するハードは出来ないだろうか。
現在単音でしかも比較的ピッチの安定した音源に対するものはソフト込みで市販されていますが、複音でしかもオーケストラのように色々な音色が一緒に鳴っているいるようなものではパターン認識のAI(人工知能)だけでなく「ファジー」理論が必要とされるのでそのアルゴリズムは極めて複雑なものになりますが原理的に不可能ではありません。
●電子ブックのCDで音と楽譜が出るものは不可能だろうか。曲の特徴ある部分を鼻歌で歌うとそれで検索出来ないだろうか。 ●現在のワープロのように自在に楽譜のレイアウトが編集出来る楽譜ワープロは不可能だろうか。
●液晶画面の付いたピアノがあれば楽譜の「めくり」は随分簡単になり、しかもそれが自動演奏されるなら、あるいは演奏をその場で譜面化してくれるならピアノを取り巻く環境は大きく変わってくるのではないだろうか。
●白黒鍵盤以外のコントローラは考えられないだろうか。例えばオランダのSTEIMが考案しているようなものや、ブックラのキーボードのようなものも考えてもよいのではないか。
●CD−ROMを始めとし、いろいろなメディアのデータを共通の物とするインターフェイスが必要ではないか。


《音楽準備室のDTM (1991-2)》

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 さていよいよ本題に入りましょう。今までの所で教師や生徒の実態に触れると共にハードウェアの実態にも触れてきました。
 特にコンピュータの世界では3カ月が過去の10年に相当する程の早さで進歩を遂げますのでこのトレード誌3冊が出る頃にはもう事情が変わっている事でしょう。
 しかし、例えハードが変わってもそれを使いこなすユースウェアはそんなに変わるものでは有りません。そこでそのユースウェアについて具体的に述べたいと思います。
 音楽準備室は一般的には楽器庫を兼ねているようです。楽器を安全に管理する義務が教師にあるかどうかは別として、生徒の無断入室を禁じたりすることにより他の部屋とは差をつけて有るはずです。音楽教育の為のDTMはまず準備室にコンピュータを設置する運動から始めてください。もしも、それが無理なら職員室の共有コンピュータにDTMのための周辺装置やソフトを用意するように運動をして下さい。
 前にも述べましたように様々なハードが有りますが、もしあなたが英語に堪能ならATARIやAMIGA等のようなアメリカ製の物が安くて良いでしょう。もう少し予算に余裕があれば、MACやIBMのセットを買っても良いでしょう。
 もしあなたが、愛国者で日本語なら理解できる場合は迷わず国産のコンピュータを選びましょう。


◎最初はアイコン体験から             目次に戻る


 どんなハードでも必ずいくつかのシーケンス・ソフトを利用できます。
その入力方式は@マウスによる音符入力、Aキーボードによる数値入力、B白黒鍵盤による手弾き入力、などが有りますが、最初は@のマウスによる音符入力が良いでしょう。
 多少はイライラしますが、「バラード2」がお勧めです。16ビット・マシーンの初期のCPUではかなり「しばらくお待ち下さい」の画面メッセージに悩まされますが、286や386のCPUですと全然問題になりません。精度の良いマウスを使用することをお勧めします。というのもほんの数カ月の使用で左のクリック・ボタンが馬鹿になる製品が多いからです。それほど左のクリック・ボタンの使用頻度が高いのです。
 まずMS−DOSで本体を立ち上げて、(起動ディスクを主ドライブにセットしたまま電源を入れれば、勝手に起動するので難しく考えなくても良い)しばらく待つと、色々なタイトル画面の後図@

のようなメニュー画面が出ます。そこで一番上の囲みにマウスを移動して左のクリック・ボタンをクリックします。
 すると図 Aのようなミキサーの画面が現れます。

 この画面は再生の時にあたかもミキサーのようにいろいろなことができるものですが、さらに画面右上の四つの小さな窓の中からSONGと云う窓をクリックするか、ミキサー画面の任意のチャンネルの一番上のチャンネル番号をクリックすると図Bのような音符編集画面になります。
後はマウスで音符を張り付けてゆけば良いのですが、このように画面の色々な表示をクリックして操作することを「アイコン」と言い、いろいろなプログラムの簡易操作する時の代表的な方法になっています。
 現在手元にDTPのハードやソフトが無くてもおよその操作の雰囲気はこれでわかると思うのですが、国産のソフトにしろ海外のソフトにしろ、殆どがこのアイコンによってマウス操作だけで入力や色々な操作が出来るようになっています。
 例えば入力する音符の長さを決める時は図Cのようなパレットとよぶ部品一覧を、プルダウンメニューと言う方法で呼び出してその中からマウスで欲しい音符をクリックすれば良いのです。
あとはカーソルマーク(マウスの位置)が矢印から音符に変わるので画面の五線上に移動してクリックすればその場所に音符が張り付けられるというわけです。

このように殆どの部品は画面上端の列にあるプルダウンメニューに格納されていますので必要なパレットを引き出す(本当に引き出しのようになっている)だけで良いわけです。
 図Dのようなパレットを使いますとコードネームの入力だけで和音を任意の転回形でワンタッチ入力も可能です。
   バラード2はみゆーじ郎と大変よく似ていますが、編集機能についてはバラード2の方がすぐれています。同じ事がバラードとみゅーじくんについても言えます。


《アイコンで動くDTMソフト (1991-3)》

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 前に紹介した「バラード2」は、「みゅーじ君」から始まった16ビット・パソコン用の初心者からかなりの業務用にまで使えるソフトでした。改善に改善を加え現在のバージョンまで来たのですが、基本的には音符を画面上の五線譜にマウスを使ってはりつけると言うやり方で、マウス無しでは考えられないソフトです。
 「プレリュード」と呼ぶソフトはそれよりも以前から10万円以上という価格でダイナウェア社から発売されていましたが、MACの経験者なら誰でもその画面がMACのものとそっくりだった事を記憶しているでしょう。
現在バージョンGまで改善されていますが、「楽譜浄写ソフト」と「音符入力シーケンスソフト」からなります。
 音楽教室や授業で必要なのはこの両方のソフトですが、両者が別々のファイルになっている物よりも同じファイルが両方で使える方が良いでしょう。その意味ではミュージカル・プラン社から出ている「MUSIC PRO−98」と言うソフトが大変優れています。このソフトの特徴は1小節に任意の数の任意の音符が書き込めることです。グレゴリオ聖歌のような自由な旋律も書いたり演奏させたりできます。
 Kuwatecと言う会社のTool de Musicは価格の割には色々な事が出来る優れ物ですが、何と4拍子以外は入力出来ないと言ういかにもロック時代のソフトです。しかもこのソフトはステップ入力は音符ではなく記号や数値入力になっていますので初心者は鍵盤を演奏する以外の方法がありません。譜面表示が美しくできるリットー・ミュージク社の「譜面美人」は演奏能力がかなり制約されます。
 「マスター・トラック・プロ」はMS−WINDOWSで動く大変良くできたソフトですが、これも楽譜入力ができません。
 一方アタリやMACのソフトは原則として音符入力が可能ですので初心者にも向いています。特にドイツ(旧西ドイツ)のC−LAB社製のNotator SLは12万円と言う価格にしては大変マイティで楽譜の印刷出力も廉価レーザープリンターで大変実用的で美しいものがあります。今の所「出来ない事がない」程の高機能ですが、ハードの方があまり普及していません。
MACはDTMのはしりです。ですからソフトもたくさん有り、迷ってしまいます。「PERFORMER」「VISION」「PRO4」「TRAX」「EZ VISION」「DELUXE RECORDER」「BEVOND」「UP BEAT」「MUSIC PROSE」「ENCORE」「PROFESSONAL COMPOSER」「HB MUSIC ENGRAVER」「FINALE」等々
 中でも「ENCORE」は10万円と値段もはりますが大変扱い易く高機能です。


《何を打ち込むのか》

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 ここまでで紹介したハードやソフトはそれぞれ優れたものですが、単品では長所だけでなく短所もやがては問題になってくるでしょう。ですから殆どのユーザーは複数のハードやソフトを併用しているのが実状です。教材ソフトの作成に用いるのならどのソフトやハードでも大差はないのですが、ただ楽譜通りの高さと長さを打ち込んで演奏させてみると何だか変な感じになってしまいます。「MUSIC PRO98」や同じソフトを含む「MIDI ブレイン」ではピアノやフォルテ等の記号も入力できますのでそれも加えてみてもまだおかしい(特にクラシック曲の場合)と思われるでしょう。
 実は楽譜に含まれている音楽の情報はその音楽の数パーセントにしか過ぎないからなのです。例えば文字を朗読するコンピュータ・ソフトが文章を読み上げるという装置が有るのですが何だか変なイントネーションやアクセントなので笑ってしまいます。
 これと同じで音楽のニュアンスを表現するするには一つ一つの音符に対して細かい表情(実際の長さや強さ)をデータとして付けてやらねばなりません。この作業は意外に大変で楽譜入力のタイプのソフトでは粗いデータで妥協してしまう事が多いのです。この細かいエディットの機能が能率的に行えるアイコン・ソフトは意外に少なく、PC−98用ではRCM−PC98と言うソフトが一番優れています。パソコンのキーボードやカーソルを使って数値入力して行くと画面の右半分に楽譜となって表示されますので馴れれば使いやすいソフトです。
 バラード2やその他の標準MIDIファイルでラフに打ち込んだあとこのソフトで細かく修正を加えて行きますと人間の演奏に最も近い仕上がりになります。
 ですからDTMを昔から(と言ってもせいぜい数年前)やっている人や業務用(カラオケやCM)の音楽を作っている人のほとんどは最後の仕上げにこのRCMを使っています。勿論一つのソフトで最後まで仕上げることは可能ですが、例えばバラード2では一つの音符を書き換えるだけでも1分以上「しばらくお待ち下さい」の表示に悩まされることが多いのであまり能率的とは言えないのです。
 また、音源も1台で8つ以上の違う音色が出せるいわゆる「マルチ音源」が主流ですので、トラック数の点でも8トラック以上が必要です。このトラックについて次号では詳しく述べますが、200トラック以上の物もあり、さらに分解能という数学的な概念も人間らしい演奏には必要になります。


《トラックは多いほど良いか (1991-4)》

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 最近のDTMソフトは音符の分解能が大変良くなり、かつては4分音符=24つまり16分音符=6でそれ以下の小さい音符は16分音符の3連符としてしか表現できないものが普通だったのが今では4分音符=480(4分音符を480に分解したものを一番短い音符とすることができる)等という大変なものが出現しています。このことは発音のタイミングや個々の音の長さのニュアンスを表現する上では大変音楽的になってきたと言えます。例えば和音を塊のような形で入力する場合は分解能が少々粗くてもよいのですが、和音をアルペジォで演奏するときはその微妙な発音タイミングを表現出来なければなりません。そんな時にはこの分解能が細かい事が大変重要になってくるわけです。
 分解能と共に最近のDTMの大きな特徴は使用できるトラックの数が驚異的に増えたと言う事です。このトラックと言うのは合奏形式の演奏において各パートの演奏をデータとして記録する独立した記録部分であり、弦楽四重奏などにおいては4つのトラックが必要になります。初期のディジタル・シーケンサはせいぜい二から四つのトラックしかありませんでしたので、パート数が増えてくると空いているトラックへ他のトラックのデータをMIXコピーして、テープレコーダーにおけるピンポン録音のようなことをしないとパート数を増やすことができませんでした。最終的には一つのトラックに複数のトラック・データがゴチ混ぜになった状態になります。こうなってしまえば有る特定のパートだけを修正するなど至難の技になってしまうわけです。
 ヤマハのC1(既に廃番)を例にとれば、同時再生可能なトラック数は200、それに編集用のトラックが200計400ものトラックが用意されています。しかも全体での同時発音数は128音ですから128名の大オーケストラの編成も可能です。マスタートラックプロでは64のトラック、RCMでは18トラック、バラード2では10トラック、一体この差は音楽として違う結果をもたらすものなのでしょうか。トラックがいくら多くても伝達できる情報チャンネルいわゆるMIDIチャンネルは16しかありませんし、最近のDTMのように出力ポートをAとBのふたつを持つ物でもせいぜい32チャンネルしか音源にアクセスすることはできません。と言う事は同時に鳴らす事のできる音色は最大でも32音色ということになります。32音色あれば大オーケストラの全てのパートを表現できますが、バラード2では第10トラックは原則としてリズム・セクション専用ですので残り9トラックつまり9音色となり小編成のオーケストラ曲すら表現できません。しかも専用音源は同時8音色しか出せませんので一層不自由です。
 ヤマハのC1の場合出力用のMIDI端子が8つありますので8台の音源がそれぞれ16音色使えますのでトータルでは8×16=128音色になるわけです。128音色と8音色では当然対象とする音楽やその用途が違ってきます。小編成のジャズやロックのバンド・シミュレーションでは8音色で十分でしょう。しかし、8パート以上でしかも個々の音色が違うような音楽や演奏ではもっと多くのトラックや出力ポートを持ったものにしないと出来ません。
 ツールド・ミュージックでは256のトラックをAB二つのポートから出力できますので32音色ということになります。(勿論16音色のマルチ音源が2台必要です)
 では何故200以上のトラックが必要なのでしょう。
 MTRと呼ばれる多重録音の技法では大オーケストラの弦楽器群を表現するために例えば第1バイオリンの旋律を何回も重ねて録音して、その厚みのあるコーラス効果を出していました。富田勲氏の初期の作品ではバイオリンだけでも80回重ねたと言われます。使用するテープレコーダーは24叉は32トラックのものでしたから当然有る程度たまると別のトラックへミックス・ダウンしなければなりませんでした。
 今日の200以上にも及ぶトラック数はこの作業を合理化するための発想でした。しかし、一つのトラックの演奏を幾つ他のトラックへコピーして数を増やしても演奏させてみると1つのトラックで演奏させたのと同じ音になります。これはテープレコーダーのテープ上の記録として考えて見るとよく解るでしょう。つまり複数のトラックのある同一の時間のデータがまったく同じなら全幅録音したものをモノラル再生したのと全く同じになると言うわけです。
 コーラス効果叉は合奏効果と言うのは演奏する人間の人数分の「誤差」の集合体なのです。タイミングの誤差、音色の違い、ピッチの誤差、ビブラートの深さや早さの違い、音の鳴っている場所の違い、これらの誤差を各トラック毎に設定しないかぎり何回重ねても意味は有りません。そのためには音源がトラック数だけ違った音色を出せなければなりません。物理的にも金額的にも無理な相談です。そこで最近は複数の誤差を含んだ音を1音色としてPCM音源に持っている音源が増えてきました。そうすれば沢山のトラックや音源は不要になるわけです。C1ではテンポLFOと言う機能があり、トラックごとにテンポの誤差を作ってタイミングやピッチの誤差を自動的に作り出すことができますが、理屈通りには行かないようです。
 というわけで現状ではポップス系は少ないトラックで、クラシック系は沢山のトラックでと言う選択になります。


《まずは単旋律の指導に (1991-5)》

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 初期のDTMがそうであったように、コンピュータに扱わせる最初の仕事は単旋律の打ち込みとその演奏です。
 小学校の音楽の授業は、低学年では読譜や記譜を目的とはしていません。丁度彼らが日本語を話しているにも係わらず、それを書いたり読んだり出来ないのとよく似ています。しかし、一生読めない書けないでは困りますので、各学年ごとに学習すべき漢字や文字を少しづつ増やして行きます。
 同じように音楽の授業でも学年進行に伴って少しづつ楽譜のお勉強が進められます。 しかし、彼らの大部分はオタマジャクシの記号的意味を知りません。数字の123は日常生活でも使いますが、ドレミは音程識別のための単なる物差しですから日常的なものではありませんし、仮にドレミが判らなくても歌えますし、楽器も演奏できます。
 さらに悪い事にかなりの数の日本の音楽教師がハ調読み叉は白鍵読みと称する偽固定ド唱法を使っているためすべての調のソルフェージュをハ長調で読ませると言う暴挙が蔓延し、音名と階名の区別のない無意味なドレミ唱法がこどもたちに楽譜の学習の混乱を引き起こしていると言う事実があることです。
 そもそもハ長調以外ではドレミを五線譜で表すことがおかしいのです。ドレミは単に主音とそれ以外の音程関係を「文字」で表現しているのに過ぎないのです。ですから本来ドレミは特定のピッチを持たない相対関係を表す番号みたいなものなのです。
 絶対音は五線譜で明確に記述できますが、相対音は何を基準とするかと言う基準音即ち主音を決めなければ楽譜にすることはできません。
 DTMによる音感指導で誤ってはならないのはこの点です。かつてミニ・キーボードで「音当てゲーム」の機能のついたものが有りましたが、「絶対音感」を目的とするなら別ですが、「和声学」にしろ「体位法」にしろ音の相対関係を基準にした音楽の法則を学ぶのには寧ろ絶対音感は邪魔になる事すらあるのです。
 「はなうたくん」なるソフトがあります。マイクに向かって歌うと「ピッチ トゥ MIDI」のA/Dコンバート・システムが作動してその声のピッチをMIDIコードに変換してくれるものですが、この場合のピッチとはいわゆる「絶対音高」ですので相対音感つまりドレミの学習には不向きです。アメリカのカーネギー・メロン大学のシステムではAI(人工知能)がこれに介在して主音を検知してドレミに変換することができます。ですから当然のことながら機能和声に従って和音伴奏を自動的につけることも可能です。残念ながらこのソフトはまだ商品化されておらず入手するのは困難ですが、自動伴奏システムとして商品化されるのも近いと思われます。
 兵庫県の竜野市にある揖保小学校ではロゴ(LOGO)によるDTMを実践しています。例えば中学年を対象とした、「創作」の授業の中で利用している場合ですが、二人に一台の割でコンピュータが配置されています。
 「創作」は「作曲」と同じではありませんが、「旋律創作」と限定して考え、まず最初の段階として、「続く感じ」と「終わる感じ」言い替えれば機能和声感を付ける目的で計画されています。子どもたちのコンピュータには3・5インチのフロッピィからロードされた五線の大譜表に終止音だけが空白となった8小節の曲がディスプレー上に表示されています。それがどんなメロディーなのかは「タートル」つまり「かめ」を移動させることにより一つづつの音やフレーズ叉は旋律単位で演奏させることができます。それを聴いてふさわしい終止音を空白の場所に埋める作業を2人で工夫させるわけです。
 ヘッドホンを使った閉回路で行いますので他人を気にせず色々な音でトライできるわけです。そして、出来上がった旋律を「楽譜」ではなく実音で発表する段になりますと子どもたちの興奮は最高潮に盛り上がってきます。従来の創作発表は「楽譜」か「演奏」と言う形でしかできなかったのがリターン・キー一つで間違いなく実音でできることに本来の発表の姿が蘇って来ると同時に、演奏に自信の無かった男の子や思っている音が楽譜に書けなかった子どもたちが生き生きと活動する姿はDTM以前には見られなかったものでした。
 最初は4小節単位の終止音から始まり、やがて開始音や経過音へとこの指導は発展してゆき、子どもたちはいつの間にか知らず知らずの内に音と楽譜の関係を身につけてしまうと言うわけです。
 この指導の特徴は
@静かな環境の中で他の子どもの発する音に影響されずに集中して学習できる。
A考えている或いは思いついた音を楽譜として記号化する課程が個別に何回でも行えるため自然に能力化される。
B楽譜と音の両方で記録が取れるため評価の個別化が合理化される。
C演奏能力を必要としないため演奏能力を越える曲にもチャレンジ出来る。
D理屈に合わない音符を入力するとエラーになるため正しい楽譜の知識が身に付く。
E好きな音色や調で演奏できる。
等の長所が観測されます。ファミコン世代の子どもがゲーム感覚で学習を進めているのを見て初期の楽譜の学習や作曲の学習にはピッタリな感じがしました。
 理屈抜きに体験ができる音符入力や音声入力システムは楽しみながら能力を身に付けさせることができる教具であると言えます。


《感じることと考えることのちがい (1991-6)》

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 前で取り上げた旋律創作の事例では、子どもたちは前後の音から判断して良いと「感じる」音を選ぶと言う学習を通じて終止感や継続感を学ぶというものでした。
 ここで大切なことは「感じる」と言うことです。理詰めで「考える」創作も無い訳ではありませんが、自然な音の流れを感じると言うのと考えると言うのでは音楽に対する構えが違うと思うのです。「終わる感じ」と言うのは、あくまでも感じであって理屈以前のレベルです。音楽教育の導入では正しく感じる「感覚」の教育が必要なのです。
 絶対音感の教育は個々の音の「ピッチ」を感じさせる能力を主眼にしたものですが、現代音楽でもない限り調性を主体とした音楽はすべて個々の音高よりも複数の音間の「音程」関係をどう感じるかによって成立していますのでこれを正しく教育しなければなりません。5〜6才までにキーボード学習を経験した子どもは殆どの例外もなく絶対音感が身に付くことが知られています。
 逆に、小学校入学以降の音楽教育ではその能力は殆ど身に付かないことも知られています。にもかかわらず小学校の音楽教育では「固定ドもどき」のハ調読みや白鍵読みが蔓延しているのは大きな問題であり、東川清一氏が声を大にして警鐘を発しておられるのもこのことなのです。オランダのレベス(Revez)が真に有効な音感は相対音感であると言っているのも当然この問題なのです。
  玄関のチャイムが「ピン・ポーン」と鳴るあの音程は世界中何故か「長三度」と決まっていますし、自動車のホーンは何故か「短三度」になっています。それぞれ調は異なりますが誰でもその音程を感じています。救急車のサイレンも長三度ですし、身の回りにはたくさんそんな例があります。
 もし絶対音高でしかそれを表現できないならずいぶんたくさんの人が不便を感じることでしょう。
 そこでDTMによってこの問題を解決する方法を模索してみましょう。


《音感教育とDTM》

            目次に戻る  かつてヤマハのハンディサウンド(HS-501)と言う機種のミニキーボードがありました。ミュージカル・ゲームと言うモードにするといくつかのグレードに従って「ピー」と音が出るのをキーで答える音当てクイズのゲームでした。絶対音感の子どもにとっては何の問題もないゲームですが、相対音感で答えるためには基準の音を知らなければならないことと明確な音の記憶力を要求されるものでした。
 このようなゲームであれば市販のソフトに依存しなくても簡単な数十行のプログラムで音源ボード付きのコンピュータであれば実行できますが、教育的な見地からすればあまり意味のあることとは思えません。 音符入力の可能な殆どのDTMソフトにはトランスポーズと呼ぶ「移調」機能があります。この移調こそが相対音感の能力なのです。この機能を使った教育プランを次に示します。
 まずハ調のドから始まる任意の音程(例えばドとラ等)を画面上の五線に入力させます。そして、それを演奏させます。
  演奏に先立ってハ調の音階を予め入力しておきそれの後で問題を聴くようにすればもっと効果的でしょう。
 つぎに任意の音を与え、その音の上に問題と同じ音程になる音を書き込ませるのですが「考えて」書き込むのではなく感じて書き込ませるためには、五線上にマウスなり音符を移動させるとその音が鳴るようなものが良いでしょう。
 それが無理なら(殆どのソフトでは無理)新しい音へ先ほどの音階をトランスポーズさせます。これによりドレミの音階が平行移動することが目で確かめられると同時に音でも確かめられ回答の手助けとなるでしょう。
 二音間の音程がこのようにしてどの音からでも作れるようになることがまず第1段階ですが、次に同じように旋律の移調も指導することもできるはずです。
 しかし、いきなり旋律全部を移調すると云うようなことをしますと、きっと感じないで考える子どもがでてくると思います。それを避けるために日頃から次のようなことを心がけねばなりません。
 @個々の音を平行移動させるのではなく移調した先の主音(ド)を意識させた上でそのドを手がかりとして後の音を判断させること。
 Aそのためには楽譜を重視し過ぎない「耳」からの教育を大切にしなければなりません。
 例えば可能な限り歌唱教材は色々な調で伴奏すべきです。誰が決めたかハ長調が最も簡単な楽譜であると云う迷信から小学校の低学年の教材は殆どハ長調で記譜されています。しかし、演奏する側からすれば8個もある白鍵よりも5個しかない黒鍵のほうが覚え易いはずで、それのなによりもの証拠に「猫ふんじゃった」はピアノを習っていなくても誰でも弾けますがもしそれを楽譜で表すとシャープかフラットが6つも付く恐ろしい楽譜になりピアノを習っていても大変な曲になるでしょう。
 幸いMIDI楽器を使って伴奏する場合はいとも簡単に移調ができますから生演奏で伴奏する場合にはそのような楽器を使えばよいのです。
 ピアノプレーヤーのソフトのような場合でも移調が簡単に出来ますから同じことです。
 DTMソフトによる伴奏の場合は楽譜を変更せずに演奏時に移調するものと楽譜そのものを移調してから演奏する物、御源を移調しておいて楽譜はそのままという3つの場合が考えられますので目的に応じて使い分けることができます。
 DTMと云えども教師が介在する以上、教師の音楽教育に対する理念の確かさを必要とする事は当然のことであることはこれで御理解いただけたと思います。


《旋律創作とDTMソフト (1991-7)》

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 作曲とまでは言わなくても、簡単な旋律を即興的に歌ったり、演奏したり場合によっては楽譜に書いたりする活動は小学校の低学年でも可能です。
 かつて音楽科の領域が「歌唱」「器楽」「創作」「鑑賞」「基礎」の5領域に分かれていた頃は「創作」イコール「作曲」と言う誤解があり、五線上に書かれたものを創作と捉えられ、随分子どもたちを音楽嫌いにしたものです。今でも私の住んでいる神戸市では「作曲コンクール」と称して小学生を一つの部屋に集めて全員に課題の歌詞を与えてそれに旋律を付けさせるという事を毎年懲りもせずにやっています。笛や鍵盤ハーモニカを使って試し吹きをしながら小学生(と言っても殆ど全員女子)が作曲(?)をしている風景は異様です。
 こんな風景こそDTMで変えられるべきです。音楽活動を最も邪魔するものは「音楽」そのものです。つまり他人の演奏が色々聞こえる中で自分の音楽を考えたり演奏したりするという無神経なセンスが学校音楽の中でも平然と何の疑問もなく行われている証拠でもあります。昔から音楽教室という空間は一斉授業のためにあっても個別学習のための配慮は何もありません。知恵ある教師は個別とまでは行かなくても小グループを編成して、グループ毎に離れた場所で練習をさせてきました。それとても悲しいかな音楽教室には隅っこが4つしか無いため5つ目からのグループは教室以外の場所に追いやられてしまうと言う現実がありました。
 旋律創作をDTMで行うメリットは学習活動の個別化が完全に保証できるということです。
 つまり電子音源による閉回路つまりヘッドホンが利用できるため他からの音による干渉を受ける事も無く、またその逆に他の生徒の活動を妨げることもなく個別の学習が可能になるのです。
 特に創作と言うような個人的要因の大きい活動では音環境の独立性が大きなメリットとなります。
 ふたつ目にDTMはCAI的な要素を持っていますので活動のスピードや量が個々の生徒で異なっていても完全に対応できると言うメリットがあります。(勿論1時間の授業単位を越えることまでは許されませんが) 利用するソフトにもよりますが大体のDTMソフトは楽譜(音符)入力のモードを持っていますので自分のイメージをマウスで入力すればプレィバックして確かめることができるようになっています。楽譜が書けなくても「はなうたくん」のようなソフトやリアルタイム入力等を使えば同じ事ができます。
 このように「音のしない」音楽教室の実現には学習の個別化や個性化を目指す新学習指導要領の精神を満たすものがあることがおわかりでしょう。明治以来日本の音楽教育はその音環境の悪さから一斉指導の形態を取らざるを得なかったわけですが、やっと前方に明かりが見えてきました。

《旋律創作におけるDTMの問題点》

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 旋律創作にDTMが利用できることは一見問題が無いように思われますが、旋律創作という活動の流れから言うとかなり現状のDTMには問題が有ります。
 その最大のものは「イメージの確認」と言う作業で画面叉はファイルに確定したものしか使えないということです。
 どういう事かと言いますと、まず子どもがする作業としてイメージ創りというものがあるわけですが、頭の中でソルフェージしてみると言う作業です。それはあくまでも第1案であって決定的な案ではないわけです。従って第2案や第3案と比較検討して修正を加えながら決定して行く作業があるのです。
 残念ながら現在市販されているDTMソフトでこの作業ができるものは皆無です。入力方法は何であれあるイメージをとりあえず蓄えて置くバッファなりメモリーが用意されていないため、とりあえず頭に浮かんだ旋律は画面上に確定入力しなければなりません。その後再生しながら修正案を画面上でエディットしなければならないわけで、旋律にしろ和声にしろ複数の案を用意して比較検討すると言う人間らしい作業ができないのです。たとえそれが数小節であってもF1ならF1のファンクション・キーを押す事により一時的にメモリーに蓄えられるなら他のファンクション・キーに蓄えられたものと聞き比べをすることにより決定に至る作業が教育的かつ人間的になるのです。
 市販のソフトの全部が画面上で確定したものだけを演奏の対象としているのは教育的ではないと思うのです。入力されたデータを一度消去してから改めて次の案を入力するやり方では敗者復活のチャンスつまり一度消去したものを復活することはできないのです。勿論「カット&ペースト」の機能を使えば一回だけチャンスはありますが、複数の案には対応出来ません。
 もう一つの問題点はマウスで音符を五線譜に貼りつける時殆どのソフトでは「音」が出ません。カーソルを五線上で移動するときあるキーを押すとその位置の「音」がでるというようにすれば耳でイメージが確かめられるようになり、あたかも「探り弾き」のような学習効果が期待できるのです。楽譜が表示できるような大きな画面を持たないシーケンサーのほとんどにはこの機能が付いているのは皮肉なことです。
 感じたことをとりあえず音で確かめられる機能は子どもに限らず、プロにも必要な機能だと思うのです。


《EDIT機能に改善を (1991-8)》

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 前に音符入力時にその音をモニターできる機能が必要であると提案しましたが、多くの方から賛同の意見を頂戴し、意を強くいたしました。
 考えてみれば当たり前の事で、音の出ないピアノで演奏しているようなものですから誰でも不満を持っていた訳です。
 そこでここではそんな不満を結集した形でその他の機能についても改善の提案をしたいと思います。

@画面のサイズ

 「バラード2」等で入力した後で全部の音符のゲートタイムやベロシティなどを変更しなければならなくなることがよくあります。そんな時ひとつの画面に2小節程度しか表示されないことが大きなネックになっています。マウスでドラッグしてエディットできるのはせいぜい2小節というのでは何10小節にわたる場合極めて作業量が増えてイライラすることが多いのです。そんな時アルダスのページメーカーのように画面サイズを変更して縮小モードが可能になれば一挙に全曲をドラッグすることも可能になるはずです。プレリュードにはレイアウトのモードがありますがエディットはできません。 (これらの機能は現在のシーケンス・ソフトでは殆どズーミング機能で実現されている 1996年現在)

A入力パートの分離

 「みゅーじ郎」や「バラード2」では通常ピアノと同じ大譜表が表示されますが、それは音域に応じて高音部譜表や低音部譜表に表示されるに過ぎません。リアルタイム入力等で右手の演奏だけをすればそれは高音部譜表にしか入力されないようにできないものでしょうか。それが出来れば左右別々に入力することによりピアノ譜として利用可能なしかもプリントアウトすることにより実用的な楽譜として活用できるものになるはずです。もし、それが不可能としても入力後大譜表にまたがる音符を低音か高音のどちらかの譜表にまとめてしまうエディット機能くらいはできると思うのですが。
 それと、音部記号にハ音記号やハ音譜表が無いのもクラシック音楽を目指す者には不便です。(これらの機能は現在のFinale Ver.3.2では実現されている 1996年現在)

Bインスタント・エディット

 音符入力に入力ミスはつきものです。そんな時現状ではRCMのように数値入力のDTMでは数値を変更するだけで済みますので大変便利ですが、音符入力のシステムでは一度その音符を消去してから改めて入力するという手間が必要です。この作業の最中に「しばらくお待ちください」のメッセージが出ます。曲の最初の方ですと数10秒も待たされることはざらにありますので、最も改善しなければならない点でしょう。
 こんな時その音符をクリックしてマウスを上下するだけで(勿論音でモニターできる)音の高さを変更したり、左右に動かすだけで音符の長さが変更できたらとても便利だと思うのです。ワープロのエディットのような感覚に近いと思いますがいかがでしょうか。 (これらの機能は現在のシーケンス・ソフトでは殆ど実現されている 1996年現在)

Cトータル・エディット

 指定した範囲の音符をまとめてエディットできる機能は現在トランスポジション(移調)程度しか有りません。ヤマハのQX3ではまとめてベロシィティを増減したりゲートタイムを増減できますが、DTMソフトでは筆者はまだそのような機能を持つものに出会っていません。音楽教育でDTMを利用する時には子供の入力結果を部分修正ではなくまとめて修正しなければならないことが頻発すると予想されます。そんな時このトータル・エディットの機能が必要になります。例えば4分音符で入力されているものを全部8分音符に変更する等のことはしょっちゅう起こることだと思うのです。Pで入力されたものをfに変更することもよくあると思われます。(これらの機能は現在の殆どのシーケンス・ソフトで実現されている 1996年現在)

Dクオンタイズの部分指定

 現在殆どのリアルタイム入力にはクオンタイズの機能がついています。通常その曲の最も小さな単位の音符を基準にしてクオンタイズしますが、筆者はまだ一度も満足なクオンタイズが出来た試しがありません。と言いますのも、トリルや装飾音符等の極めて小さな音符がありますとそれを基準にしなければならないため長い音符のクオンタイズがおかしくなるか、逆に大きな音符を指定すると小さな音符がおかしくなるかのどちらかになってしまうからです。ですから画面上のドラッグされた部分だけをクオンタイズするエディット機能が無いと、現状のようにクオンタイズによってかえっておかしな結果になるということは避けられないと考えられます。特に指の訓練の未熟な子供のDTMの場合おかしいところを指摘抽出して指導した上でクオンタイズ修正ができることが不可欠です。(これらの機能は現在の著名なシーケンス・ソフトでは殆ど実現されている 1996年現在)

Eコントロール信号の追加機能

 一切のクレッシェンドやデクレッシェンドの信号を入れずに入力(演奏)して、それにどんな強弱の表情をつけたらよいかを実験的に行う指導や授業がDTMでは考えられます。そんな時に演奏(再生)させながらそれにボリュームやベロシティの追加や変更が可能になる機能が必要です。前述のQX3ではそれが可能ですが、RCM等では別のトラック(チャンネル)にコントロール・チェンジだけを記録すると言う方法でそれが出来ます。
 DTMでも何かグラフィックな方法でそれができないでしょうか。(これらの機能は現在のシーケンス・ソフトでは殆ど実現されている 1996年現在)

Fトラブル・エイド機能

 トラブルが生じた時、教師の手を借りずに対応できるヘルプ機能と修復機能が欲しいと思います。(この機能は現在のシーケンス・ソフトでは殆ど実現されていない 1996年現在)


《国産ソフトか輸入ソフトか (1991-9)》

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 現在国産のソフトではNECを始めとして富士通、東芝、日立、エプソン等の同じ系統のCPUに依存したものがあり、それらの間ではプログラムやデータの互換性があります。一部の機器ではIBMーPCとの互換性があります。
 一方シャープはMAC等と同じ系統のCPUを使用しており前述のものとは互換性がありません。しかし、輸入物のソフトとは最も親密な位置にあります。
 国産のハードは殆どMS−DOSに依存しておりその劣性遺伝を引き継いでいます。従ってそのハードの不完全さからくるソフトの不完全さがあることが大きな障害となっています。MS−DOSも最近ではWINDOWS ver.3のリリースによりかなり改善されましたが、640Kというメモリーの制約から大きなメモリーを必要とする緻密なソフトができなかったことや、スクリーン・フォントが一種類しか使えないため情報量の少ない画面しか表現できない等の欠点がありました。
 海外で主流になっているMACはDOSの概念をユーザーに意識させないもので数分の練習で誰にでも扱えるようになるという教育用DTMの目標である「イージー・オペレーション」を実現しています。
 MACの代表的DTMソフトに「フィナーレ」というのがありますが、筆者の体験では現在DTMの最高峰にあるように思います。しかし、それは機能という観点から言えることで実際の操作となればとても小学生や中学生の手に負えるしろものではありませんし、その購入価格も国産のセットから考えれば随分高くつくことを覚悟しなければなりません。
 DTPのソフトでアルダスの「ページ・メーカー」というのがありますが、これはハードがNECであれMACであれ同じパフォーマンスを持っています。DTMでも「マスター・トラック・プロ」が同様な働きをします。勿論どちらもMS−DOS側にWINDOWSの環境を設定した上でのことですが。
 このように考えますとハードが国産であれ、輸入物であれその動作環境が同じレベルになってきますとDTMソフトは国産、輸入を問わず優れた機能を持つ物が普及することが考えられます。

◎海外のDTMの現状。

 最近ISME(国際音楽教育会議)の論文集にロビン・スティーブンスという人が「音楽教育におけるコンピュータ・テクノロジーの使用の折衷主義のアプローチ」と題する文を書いています。4500語からなるこの論文には次のような主旨の主張がおこなわれています。
@アメリカにおける音楽教育へのコンピュータの利用は主としてCAI(Computer-Assisted-Instruction)が中心で音楽理論や耳のトレーニングに利用されてきた。
A英国の場合は創造的な音楽創りをめざす(作曲と演奏)のための道具として利用されてきた。
BCAIによる耳の知覚訓練はそれを使わない場合と比較して50%以上の効果がある。それは、

などの理由が考えられる。

C認知理論に基づくコンピュータの利用が考えられなければならない。

D折衷主義とは@とAの学生ニーズに立った、そして教師にとっても都合の良い折衷のことである。
この論文において米国と英国のDTMの現状を対立する両極として捉えている事が注目されます。
@の典型としてMACのListenという耳の訓練のソフトを紹介しています。
Aの例として同じくMACのハイパーカードによるCD−ROMの名曲シリーズを紹介するとともに、Cocertware+、 Creator、 Master Track Junior、 Sequencer、 Performer の簡易ソフトとコンポーザ関係のソフトも紹介しています。
 日本でもカワイが@のタイプを手がけていますし、ロゴでもいくつかのソフトが利用されています。ただAのタイプとなると前号でも指摘提案したようにかなりの量のソフトがありながら教育用DTMとしての機能はまだ不完全です。


《リズム・トレーニング (1991-10)》

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 音符が相対的な長さを表現出来るようになってまだ700年程度しか経っていません。ネウマと呼ばれる音符ではある種の長短を表現できましたが、アンサンブルのように同時にいくつかのパートが進行するような音楽の場合、絶対テンポに合わせてビート即ち拍がシンクロしなければなりません。或いはダンスや舞いに用いられる音楽では動きのきっかけとなるタイミング・マークとしてアクセントも必要になってきます。これらの言語化の難しい音楽的要素は身体で覚えるしかありません。基本的に拍子というのは身体の上下運動を1サイクルとする一拍子系と二足歩行に由来する二拍子系に分類されます。三拍子は一拍子系に属し、円運動で表現されます。幼児が二足歩行ができるようになった時点で二拍子系のリズムは身体表現として可能になりますが、それ以前はブランコやゆりかごの一拍子系のリズムを心地よく感じることができます。
 幼稚園や保育園では特に文部省からの指導があるわけではないのですが、お遊戯と云う形態を通じてリズム感を養うことを目的としたカリキュラムが組まれているのが普通です。「音楽・リズム」という領域がそれですが、指導要領の改訂に伴い名称は変わりました。しかし、内容や目標に変化はなく幼児に音程感やリズム感をつけさせるために色々と工夫されています。
 リズム感の育成には身体活動は不可欠です。しかし、現状のDTMでは身体活動とのインターフェイスは存在しません。特にリズム感ではタイミングとアクセントが行動的に把握されなければなりません。お遊戯におけるダンス的要素はそれを助長します。童謡を歌う事により一定のテンポや音程、タイミングなどを音声的な行動として身に付ける事ができます。
 このようないずれの行動も現状のコンピュータは認識出来ませんし、反応することもありません。かなり例外的なインターフェイスとして、バイオ・フィードバックの技術を利用したものがありますが、皮膚表面から筋肉の動きを検出するための電極を全身に張り付けなければならず、幼児にそれを付けさせる事は不可能であることはやるまでもなく判ります。
 以前デパートの玩具売り場で畳一枚程のビニールシートに色分けされたドレミの島を印刷したものを見かけた事があります。どこのメーカーのものか記憶はありませんが、子供がその島を踏むと「ド」の島の場合「ド」の音(絶対音か、そうでないかは不明)が鳴るものでした。コンピュータのキーボードの代わりにそのようなシートなりパッドを利用すると子供の全身の動きを使った入力装置が可能になります。積極的に使えばジャンプしながら旋律を演奏することも可能です。或いは単に叩くとか踏むと云う動作で反応するものも利用できると思うのですが、基本的なテンポ感やリズム感がある程度身に付いた子供の場合なら有効でしょうが身体の一部だけで反応するというのは幼児には不向きです。
 子供がゲームやお遊戯の感覚で取り組んで知らない間にリズム感を身に付ける事が望ましいわけですから、ソフトもそのような幼児心理学に基づいたものを用意しなければなりません。
 筆者は現在中古のパソコン用キーボードを改造して必要なキートップの直下にあるマトリクス・スイッチの接点を外部スイッチへ引き出せないものかと研究中ですが、幼児とはいえ全体重をかけるわけですから耐久性の高いものにしなければならないので苦労しています。
 いずれにせよ、リズム感の陶冶は幼児期から開始されなければならないことはあらゆる音楽教育学者が述べていることであり、その部分にDTMが関わる可能性は極めて高いと考えられます。
 小学校では椅子に座ったままで受ける授業が多いので当然身体の一部(主として手や指)を使った反応に対する対応のあるDTMと云う場面が多いと思います。
 これに対するハードは各楽器メーカーから色々な形で発売されています。ドラム・パッドの形をしたプレートをスティックで打つものや、卓上型で上面のいくつかのパッドやボタンを指先で打つもの、楽器のキーボードがそれぞれ特定の打楽器音を発するものなどがあります。
 これらをうまく利用すればコンピュータ画面上で視覚的にも把握できるようになると思うのです。ブルナーの説では認知の段階は、@行動的把握、A映像(音響)的把握、B原理・記号的把握となります。
 幼児の段階では当然@の行動的把握であることはおわかりでしょう。小学校の段階ではAの音による把握ということになります。楽譜や理論による把握はBの原理やシンボルによる把握と云う事になり小学校の高学年や中学校でと云う事になります。
 例えば、4分音符はふたつの8分音符からなるということは数学的な認知を必要とし ます。ましてそれがやにまで分割できることは更に高度な数学的認知を必要とします。或いは、と同じリズムなのですが、子供の理解は@の行動的把握では単にスキップのリズムとして長い滞空時間の拍と短いつなぎの拍として把握されます。しかし、小学校高学年以上では、図形や計算式を用いて説明する事が多く、リズムと云うのは「拍の分割と連結を基礎としている」と云う知的理解をベースにしています。
 日本人はリズム感に乏しい傾向があると言われますが、各地の「○○太鼓」と呼ぶ太鼓のリズムにはとてもそう思えないものが多く見受けられますし、祇園囃子のように「コン・コン・チキチ」と「唱歌(しょうが)」するようなリズム・メソードも現在でも行われているのを見る限りそうでもないと思うのです。
 いずれにせよ、リズム感というのは音楽的表現では極めて大切な能力であり、DTMはこのエリアで、大いに期待されています。


《ハーモニー・トレーニング (1991-11)》

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 和音は音色の一種である。との考え方があります。確かにメジャー・コードとマイナー・コードでは鳴った瞬間のイメージは明らかに違います。
 しかし、もともとハーモニーの概念は19世紀までは「機能和声」の概念であり、個々の和音の響きよりも旋律の終止感や中止、休止感を補助する機能を重視する考え方から更に調性感や転調の補助をハーモニーの世界では重要視してきました。
 現在市販されているDTMのソフトの多くにコード・ネーム入力のモードがありますが、これはいずれも「鍵盤和声」の立場から和声の部品を供給するかたちをとっています。
 一部のシンセには旋律を弾くと自動的にコードがつけられるものもありますが、いわゆるAI(人工知能)によるものはカーネギー・メロン大学のダンネンバーグの開発したものが最高です。それですら、予め基本的なコード進行を学習させておく必要があり、純粋な自動伴奏ではありません。
 この自動伴奏の機能は教育用DTMには不可欠の機能であり、その開発が待たれる部分でもあるのです。
 しかし、ハーモニーの基本原理は「和声学」で明記されてはいるもののそれをアルゴリズムとしてプログラム化するにはあまりにも「ファジー」な部分が多すぎるのです。ドッペル・ドミナンテ位までは可能かも知れませんがカウンター・ラインの自動生成やそれに伴うコードの転回型の決定やベースラインの進行などは本質的に人間の世界であり、教育的な見地からも全自動化することには疑問があります。
 ヤマハのエレクトーンに付いているABC(オート・ベース・コード)のシステムは確かに優れており試行錯誤のためのシステムとして利用出来る可能性があります。
  実際にこのABCを使ってみると自動的に演奏される伴奏が次に弾かれるべきコードを暗示しているようなケースがよくあります。これは恐らく一般的なコード進行がかなりアルゴリズム化されているからでしょう。
 音楽教育のためのDTMではこのような半ば法則化されたコード進行を学習者に教える必要があります。最も簡単な例では、曲の終わりを氓フ和音と仮定して、その一つ前に」や「を設定するというのは最も基本的なアルゴリズムでしょう。
 現行の市販DTMはこのアルゴリズムを持たないため、ハーモニーの教育機能はありません。カワイが出しているミュージック・ドリルというソフトには音楽黒板というものがあり、マウスまたはキーボードから入力して、演奏させるといういわゆる試行錯誤型のものですが、評価や判断まではやってくれません。しかし、音と音符の関係を視覚と聴覚の両面から学習できるものです。
 ハーモニーの学習はベース進行に基づきます。ハーモニーの決定以前にベースが決定されていなければならないのです。このベースの決定は移動ドの能力がなければできません。ABCシステムではすべてのアルゴリズムはベースを基にして組み立てられているものと思われます。
 従ってハーモニー・トレーニングのソフトはベース・トレーニングを初期段階として組み入れなければなりません。旋律にふさわしいベースの選択を学習し、そのあとそのベースによるコードが決定されるというもので、当然ベース入力の段階で評価・判定システムが機能します。
 日本人の和声感覚の乏しさはベース感覚の不足に起因していることははっきりしています。
 小学校の低学年からこのベース感覚をしっかり身に付けさせることは音楽教育の急務です。ロックですらベースをただのリズム楽器くらいにしか考えていないミュージシャンがいっぱい居る事を考えると、そんな音楽を聞きながら育つ子ども達のベース感覚は取り返しのつかないものになる可能性があります。
 和声の歴史的な発達は@オルゲル・プンクトと呼ぶ原始的な持続音に始まり、Aオルガヌムと呼ぶ機能的持続低音に進化し、西洋の石像建築の特徴であるエコー効果のおかげで、BホモホニーやCポリホニーへと進んできたのです。
 ハーモニーの学習はまさしくこの道のりを忠実に歩くことから始まります。
 残念ながら日本は紙と木で出来た無響室のような環境でしたからこの倍音列に基く和声感のある音楽は育ちませんでしたが、三味線の解放弦の使用や琵琶の音楽には明らかにオルガヌムの傾向が見られます。その反面ジャズの和音のように音色として和音を捉えるやりかたは笙のパート等によく出てきます。
 今日の小学生たちは西洋音楽の洪水の中で誕生し、育ったわけですから和音の感覚は十分にあると考えられます。カラオケ・スナック等でもヤングがハーモニーを付けて歌っているのをとても不思議そうに見ている中年のおじさんたちがいます。
 そんなヤングたちが育った背景には学校教育の影響があったのでしょうか。恐らくあったとすればアンサンブル学習の強化というようなものでしょうが、何よりも大きな影響を与えたのはマス・メディアだったでしょう。
 DTMはメディアとして捉えるともっとインパクトのあるものとして子ども達に素晴らしい音楽性を与えてくれるものでなければなりません。
 


《ついに発見夢のDTM (1991-12)》

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 1991年10月16日からカナダのモントリオールで開かれたICMC(国際コンピュータ・ミュージック学会)に出席したついでに、MIT、スタンフォード大等のアメリカのハイテク最先端の見学をしてきました。
 コンピュータ・ミュージックの世界について言うなら特に目新しい作品や技術は無く、相変わらず「実験音楽」や「前衛音楽」の域を出て居ません。
 ただ、音作りの新しい手法についてはかなり進んだものを見ることができました。
 そのほとんどがDSPの技術を使ったもので従来の

@正弦波合成方式、Aフィルター方式、B変調方式、Cサンプリング方式ではなくD演算によるDSP方式(フィジカル・モデルやVL音源など)

に移行しつつあることがうかがえました。勿論加工の対象となる音源はサンプリングされたものや正弦波などですが、画面上でマウスを使って自由にデザインや加工ができるのが大きな特徴です。従来のシンセのようにつまみやボタンに煩わされること無くしかも自由に音が作れるというのが一般的な方向です。
 DTMソフトの方はと言えば、MIDIマネージャーのようなデータのやりとりを管理するようなものが多い中でIRCAMのグループが開発したMAXというソフトが目をひきました。これはすでに国内でも入手可能ですが、ファイルの内容まで管理できるもので演奏の細部にいたるまでプログラムできるものです。例えば音色の設定はもとよりピッチベンド、テンポ、ダイナミック等の音楽的表現にいたるまでが命令文を書いたブロック同士をただ線で結ぶだけで編集できるもので、今後国内でも利用者が激増することでしょう。
 コンピュータのハードもNEXTと呼ばれるものがかなり使われ始めていますし、FFTを高速グラフィックで描くシリコン・グラフィックス等は今後DTMと言えどもグラフィックスと密接な関係を持つ分野では日本にも多く導入されることでしょう。
 さて、MITのある博士課程の学生が開発中のソフトは、64チャンネルのMIDIを駆使するサン・コンピュータによるものですが、演奏データは、マスタートラック・プロのようにシーケンス・データが音域別の横棒グラフになって画面上に現れます。マウスで特定のブロックを囲みそこだけを演奏させたりカット・ペーストしたり移動出来るばかりでなく、マウスで移動させた位置で演奏させたり、上下に移動して調を変えたり、横に拡張してテンポを変えたり、順番を入れ換えたり画面上の操作で全部できてしまうものでした。これは作曲家だけでなく演奏家にとっても視覚的に音楽が構成できると言う点で大変素晴らしいものでした。しかし、残念なことにサンという大変高価な機材を必要とすることと、ソフトが市販される可能性がまだないということでまだまだ我々には縁の無いものでした。
 ところが、遂にそれ(それ以上)のものをロス郊外にあるキャルアーツ(カリフォルニア・アート・インスティテュート)で見つけました。ここは創立一五年という若い大学ですが、モートン・スボトニクという昔からシンセをやっている人なら誰でも知っている人が中心になっています。
 「インタラクター」と言うソフトがそれでマック上で動くソフトです。このソフトはドクターCから近日中に発売されますが、前述のMITのソフト以上のパフォーマンスを持っており、マウスによる移動やコピーは勿論のこと、断片的に思いついたモチーフをあちこちに書き込んだものを集めて曲に仕上げるという正に作曲家がやる作業をそのまま視覚的に行えるという代物で、このままで十分小学校から音楽大学まで利用できる素晴らしいツールです。
 @通常のシーケンス・ソフトと同じような機能がある。
 A楽器の鍵盤から入力したものがすぐシーケンス・データとしてウィンドゥにグラフィック表示され移動を始めとするあらゆる編集をマウスで行える。
 Bブロックごとに登録されたシーケンス・データを自由にマウスを使って結合できる。
 Cテンポのコントロールをキーやその他のツールを使ってリアルタイムにできる。(指揮の動作で)
 Dリモート・グローブのような手袋型をしたコントローラで楽器に触れずに演奏できる。
 というような機能があるのですが、とにかく「音楽」と言う立場に立った「演奏」や「作曲」「編曲」の素晴らしいツールです。このソフトについて入手次第詳しく紹介したいと思います。
 98をメインとする我国のDTMの世界もウィンドウズ3(現在でWindows95)の普及でこのようなソフトが利用できるようになる日も近いでしょうが、依然として障害になるのはマウスとMIDIインターフェイスをハイレゾ・モードでは共有できないことと、「音楽」や「教育」のためのソフトが少ないことです。
 操作する人の思考を妨げない、手続きの簡単なしかもあらゆる音楽的表現をプログラムできるソフトは今の所この「インタラクター」をおいて他にはありません。
 あれもこれもと断片的な機能はあってもそれらを統括するソフトやハンドリング・ソフトが非音楽的なのが我国のDTMソフトの現状です。
 「バラード」でもアメリカで市販されている(国内ではローランド社)マック用のものは98用のものとは比較にならないパフォーマンスがあります。
 マウスの機能をフルに利用できるウィンドウズ3でも実際に操作してみると自分の現在位置が判らないとか、遅いとか色々問題があるようです。


《再生装置としてのDTM (1992-1)》

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 最近リットー・ミュージック社からCDR−M10と言うCDプレーヤーのMac用のインターフェィスMIDI−world−MACが発売されていることをご存知でしょう。SCSIナンバー「1」に固定されてはいますが、MACのSCSIインターフェィスの終端にセットすればCD−ROMのプレーヤーとして実に安価に利用できます。通常のCDプレーヤーとして利用する時はMacの画面上左隅のアップル・メニューの中からMusicBoxと言うのを選択するだけで附属のステレオ・イヤーホンからCDサウンドを聴くことができます。マルチ・ファインダーを利用すればCDを聴きながら他の作業を平行して行うこともできます。操作はマウスを使ったアイコン選択だけですから極めて簡単です。
 もったいない話ですが、個人用鑑賞機器として使ったり、何か他のソフトと組み合わせながら使ったりできるかも知れません。
 この何か他のソフトと言えば例えばその曲に関する学習ソフトなどでしょう。と言うわけでその目的のための情報付きのオーディオCDがCD−ROMの形でアメリカでは市販されていますので紹介しましょう。
 いずれもマッキントッシュのハイパーカードを前提としたソフトですが、一つはVoyagerという会社から出ているもので、現在「ベートーベン交響曲第9番」と「ストラヴィンスキー2.0」の2タイトルがあります。もう一つは、ワーナーのAUDIO NOTESシリーズで、これも現在「モーツアルトの歌劇・魔笛」と「ベートーベン弦楽四重奏第14番」の2タイトルです。「魔笛」は3枚ですがベートーベンは1枚のCDです。しかもどちらも現地ディスカウント価格で39ドル(5000円)です。ボィジャー社のものは定価で69ドル(約9000円)、いずれにせよ1万円以下で販売されています。
 まず、Macのハイパーカードを立ち上げます。それぞれのCD−ROMはすでに画面右に表示されているので、それをダブル・クリックしてファイルを開き、その中のインストーラーをダブル・クリックするだけで、画面情報やMIDI情報がスタックとして取り込まれます。全部の情報が揃うと演奏(オープニング・テーマ)が鳴り始めます。あとは画面指示に従って色々なメニューをオープンしてゆけばよいのです。

 @ただ聴くだけ(現在演奏中の楽章や小節数、題名)等の情報は逐次画面に出る。  A現在演奏中のパートをブリンク。同時にそのモチーフを楽譜表示する。  B作曲者や音楽史の解説と共に演奏する。場合によっては曲を中断して別の音と画面で説明する。  Cオペラの場合は歌詞を「英語」「ドイツ語」等の選択に従って演奏とシンクロさせながらリアルタイムに表示する。  D和声分析や楽曲分析を演奏とシンクロさせながらリアルタイムに表示する。  E演奏なしのクイズ(最後に得点が出る)  F自由なメモ欄を表示させながら演奏。  G紙芝居のようなグラフィック画面とシンクロさせながらの演奏。

 これらの選択肢をマウスで操作しながら鑑賞(学習)するわけですが、その組み合わせにより聴き方は何万通りとできることでしょう。
 特にベートーベンの弦楽四重奏では、弦楽器についての説明が図入りで、視覚的に説明されるばかりではなくその歴史的な発展も説明され、さらに「カノン」等の音楽用語の説明をクリックすれば、音声(残念ながら英語)のナレーション付きで実際のカノンの例を説明してくれると言う親切さです。子供たち一人ひとりの興味の対象に応じて学習が展開されるわけです。
 これをM10で試したところ全然問題なく動きました。次に示すのがベートーベンの弦楽四重奏の2000ページにわたるハイパーカードの一部です。





《MIEという音楽授業支援DTM (1992-2)》

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 CD−ROMが音楽教育に於けるDTMの有効なメディアであることを前号で取り上げましたが、今アメリカでもう一つの新しい音楽教育システムが静かなブームと成っていることをまだ日本では紹介されていませんので紹介しましょう。
 MIEというのは、Music In Educationの略で、1988年から企画が始まり1991年8月から全米で導入され始めた音楽教育システムです。
 システムは16台のMIDIキーボードとマッキントッシュ・コンピュータおよびCD−ROMからなり、一見するとハード中心のMLやCAIのように見えます。しかし、このMIEはそのソフトに大きな特徴があります。
 日本の音楽教育は指導要領というものにより構成された学年別カリキュラムでできていますが、MIEはナン・グレーディッドを原則とする内容別カリキュラムで構成されています。音程・リズム・ピッチ・メロディー・ハーモニー等11項目からなるカリキュラムは、さらにビート・メーター・テンポ等の細かい要素を含んでおり、それらの要素を巧みに含んだ145項目のモジュールと呼ぶ教材群で構成しています。
 これらのモジュールはマックのハイパーカードで管理されており、一つのモジュールは40分以内で展開されるように時間管理も同時に行われます。
 MIEは生徒のためだけではなく、教師にとって極めて有効なツールです。  ホーム・カードに表示されるアイテムは
@カリキュラム・メニュー 
Aソングのメニュー 
B各生徒の個人の記録 
C生徒用楽器の配置と生徒情報 
Dモニター(誰がどう弾いたか) 
Eクイズの設問 
F各楽器の状態のチェック
等ですが、殆どコンピュータの知識がなくてもアイコンの操作だけで目的とするアイテムを選ぶことができます。
 このことは指導要領や教科書、指導書、補助資料、問題集などで構成される日本の音楽教育と違って個性的な授業の展開を支援することが可能であることを意味します。
 レコード・ブックというカードを選ぶとその教師がそのクラスに対して前時までにどのような授業をしたかがモジュール名と使用時間までもがわかるプログレス・レポート画面や、さらにその課題の到達率や、何をもう一度やるべきかや何が省略できるか等が表示されます。スチューデント・カードを選ぶと個々の生徒の到達率やその他の情報が一枚のカードとして表示され、レッスン・カードでは、それを手がかりにその日の授業を決定するためのメニューが出ます。授業内容を決めると使用する教材(ソング等)一覧が表示されますので、特にアイデアが無いときはその指示に従って授業をすることも出来ますし、自分でプランすることもできます。
 カリキュラム・カードではその曲をどんな形で演奏させるかを自由に設定できます。テンポや楽器は勿論のことパート間のバランスや特定パートのキャンセルなども自由に変更できます。生徒用の楽器に転送されるデータはMIDIですが、CD−ROM等のオーディオ信号は別回路のオーディオラインからステレオで供給されます。
 例えばメロディーを演奏するように教師が指示したとします。教師がキーボードで演奏するキーと同じキーを押さえると生徒用楽器は「イエス・グッド」という声が出ます。まちがえると「トライ・アゲイン」と言うボイスメッセージが出ます。これらのボイスメッセージはオーディオ回路から供給されます。ボイス・モードを使わない時は教師のMacに誰がどのキーを押しているかが一目で判るディスプレーが出ます。
 アメリカの標準学級定員は33名ですが、実際には30名以下ですので、16台(MIDIチャンネルの限界)をキースプリットで鍵盤の上半分と下半分に分けて一台あたり二人で使うと充分なわけです。
 MIE−1と呼ぶヤマハ・ポータートーンを母体とした鍵盤は5オクターブありますので、真ん中の一オクターブをキーボード・スプリット・ディバイダーとよぶカバーで隠してしまうと二オクターブづつの二人用鍵盤になるのです。
 一つの単元が終了するとクイズが出されキーボードを使って生徒たちは回答します。この時ボイスメッセージが個々の生徒に対応して行きます。結果は自動的にMacにフィードバックされ、レコードファイルに個別に保存されます。
 このシステムでは教師から送り出すソースはMIDI信号による演奏データの他にCDなどのオーディオ信号やボイスメッセージ等があり、生徒のほうからは単純にMIDI信号だけがコンピュータに帰ってきます。
 従って、鑑賞教材等は個々の楽器のヘッドホンを使用してCDプレヤーからの素晴らしい音をひとりひとりの耳に直接届けることも可能ですし、それに合わせてキーボードを叩いたり、歌ったりすることも可能なわけです。
 単にキーボードの練習をするのではなく音楽の学習に必要な機能をすべてコンピュータを仲立ちとして構成したソフトウェアそれがMIEなのです。
 開発の中心となったマイク・ベネットを始め、そのスタッフの殆どが音楽家か、教育者であり、コンピュータだけの人間がひとりも居ないことでもこのソフトの高い教育性や音楽性を評価することができます。
 DTMが教室の端末とどう係わるかを示唆するプロジェクトです。日本でも電子キーボードによる音楽教育が段々盛んになってきましたが、参考になるシステムです。


《DTM自作ソフトの可能性 (1992-3)》

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 いろいろ市販のソフトが出回ってきましたが、そのソフトの機能を全部使いきることはまずありません。そこで出てくる問題は自作のソフトは作れないだろうか、と言う問題です。
 DTMである以上音が出る必要があります。しかし、コンピュータの内部でどのようにして音を出しているのかを知らなければそれもできません。
 大きく分けて音を出す方法は二つあります。一つはBASICのプログラムのMUSIC MACROを利用して内蔵音源を鳴らす方法です。これは、多少BASICを経験した人なら比較的簡単にできますし、グラフィックも加えれば楽しい画面も簡単に作れるでしょう。
 もう一つの方法は、Cのような言語で、直接MIDIを制御するプログラムを自分で作る方法です。初めて勉強したプログラム言語がCの人にとってはCの方がBASICより簡単だとも言われます。これは、Cで書かれるプログラムが「構造化」し易いからだとも言われます。このような目的のために書かれた本も出版されていますが、BASICと違いオブジェクト・ファイルやアッセンブルと言うややこしい手続きが必要でBASICのように実行させながら段々プログラムを完成させるというようなことは難しいのです。
 そこで、誰もが考えることはBASICでMIDIを制御するプログラムはできないのかということですが、インタプリタ(間に通訳が入って機械語に翻訳しながら実行する)型のためどうしても実行速度が遅くなってしまい2〜3パートの遅い曲ならいざ知らず、そうでなければどうしても実行速度に無理があります。ただ、筆者はまだ実験していませんが、TURBO BASICやQUICK BASICの場合コンパイル(直接実行できる形に)しますのでかなり実行速度が早くなり、可能性はあるかも知れません。
 誰しもが最初に考えることはMIDIを扱うメモリ上のアドレスは一体何番で、何というポートを利用するのかと言うことです。コンピュータのマニュアルにもMIDIのマニュアルにもそのことは一行も触れられて居ません。実際にはE0D0とE0D2にアクセスすればよいのですが割り込みの設定やMIDIデータの翻訳などいろいろと複雑なプログラムを同時に必要とします。  結論から言うとまだBASICの方が可能性があります。PLAY文の後にデータを文字列でくっつけるだけですからそれほど難しくはありません。(ただし、CLEARとか、PLAY ALLOC等の若干のおまじないのような文が必要)
 このMML(ミュージック マクロ ランゲージ)のデータはMUSIC PRO98のようなソフトで作成して、MMLモードでセーブすることができますので案外簡単に作れるかも知れません。
 さて、MIDIをドライブしたいが、そのプログラムは自分ではできない、という場合のもう一つの方法があります。それはMAXというソフトを利用する方法です。 このMAXというソフトはマッキントッシュのソフトですが、画面上に仕事やデータを並べてそれを手順にしたがって線でつないでやるだけの簡単なものです。MIDIMANA GERの場合もそうですが、線でつなぐというのは視覚的にもよくわかります。操作はすべてマウスで行い、「オブジェクト(部品)をラインでつなげる」という作業だけで自分だけのMIDIプログラムを作ることができるのです。
 例えば「INPUT」というブロックに「キーボード」というブロックをラインでつなぎMIDIチャンネルを指定するだけで実際に接続されているキーボードが入力機器となります。このようにハードやデータをオブジェクトとしてただそれをどう関係付けるかという作業だけでプログラムが出来上がってゆくのは愉快です。
 残念ながらフランスのIRCAMで開発されたこのプログラムは、現在オプコードシステムズ社から開発者向けのみに発売されていますので、自分が何らかの開発者であるという証明が無いと入手できません。
 58000円というお手ごろな値段ですが、それ以上の価値を生み出すことでしょう。

 


《DTM自作ソフトの可能性(2)(1992-4)》

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 前回はマックス(MAX)について紹介しましたが、今回はインタラクター(INTERACTOR)と比較しながらもう少し詳しく紹介しましょう。
  マックスはオブジェクト・オリエンティッド・プログラムとして、特に視覚言語である点を紹介しましたが、インタラクターも固有のアプリケーションではなく、マックスと同じ視覚言語なのです。

 その大きな違いは、マックスではボックスの形をしたモジュール(オブジェクト・ボックス)をパレットから選んでパッチング(線で結ぶ)するという、昔のムーグシンセサイザーのようなパッチングシステムであるのに対して、インタラクターは、オペレーターと呼ぶユニットをフローチヤートのように繋いだものをステートメントと呼び、それをいくつかの単位で集めたものをシーンと呼び、そのシーンをシーン・グループに分け、全体をドキュメントと呼ぶように、原子→分子→物質→物といった具合に構造化している点です。
 マックスの方が変更や追加が簡単ですがクモの巣のような画面になり、視覚言語としては複雑になりすぎる傾向があるのに対して、一連の作業をシーンとしてルーチン化できるインタラクターの方が、大まかな把握ができて簡単です。またマックスは音楽のデータだけでなく演算やグラフィックスまでもプログラムできるのに対して、インタラクターはどちらかと言えば音楽データ専用のツールです。それではマックスとインタラクターを比較しながら説明しましょう。









 

 図1−図7までがマックスの画面で、オブジェクト・ボックスを線でパッチングするだけでプログラムができ上がります。必要なパラノーターはボックスの中に書き込めばよいのですが、必要に応じてボックスの大きさやインレット・アウトレットの位置や数は変更できます。実行の際にはどのオブジェクトから実行するかという順番に約束がありますので、やや難しい面もあります。



  図8−図10は、インタラクターの画面の例ですが、こちらは全部絵文字のオペレーターと呼ぶアイコンをマウスでクリック、ドラッグするだけですが、すぺて枝一列という約束があります。分蚊が必要な時は括弧マークを使ってTHEN ELSEのようなベーシック(BASIC)感覚の設定をします。視覚言語でありながらマックスのような構造が見える形ではなく、リニア・プログラミングになっています。ですからベーシックのような言語を体験した人には大変分かりやすいかも知れません。
 図10で示したように、それぞれのアイコンにはパラメーターを指定しなければなりませんが、これは見えないように隠しておくこともできます。
 本文では省略しましたが、エディットを初めとする色々な画面モードがあり、グラフィック・モードでは手描き感覚でマウス入力することもできます。すでに米国サンタモニカの小学校で実験的に利用されていますが、操作そのものは小学生にも簡単にできるようなものがあります。画面上であるブロックを上へドラッグするだけで調を高くしたり、右へドラッグするだけで、テンポを遅くしたりできます。
 また、MIDIグローブをつけて指や腕を動かすだけで、シーケンス・データを自由なテンポで演奏させるようなこともできます。もちろんそれらのプログラムは、全部手製のオリジナルであることは言うまでもありません。


《DTM自作ソフトの可能性(3)(1992-5)》

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 DTMを@シーケンス・データの入力や出力に用いる。AMIDIデータの編集や修正に用いる。B楽譜の浄写や印刷に用いる。というのが市販のDTMソフトの主な機能です。これに教育的な機能を付加したものも河合楽器製作所やビクター音楽産業から発売されており、マックやアタリのソフトにも同様な機能を持つものがたくさんあります。
 近く発表される見通しのヤマハのコンポーザーソフト(既に廃番となった)は昔懐かしいMSXのコンポーザーのMS-DOS版で、画面こそIBMのウィンドウのようになっていますが、初期のDTMユーサーにとって懐かしい操作や機能が再現されています。もちろん昔のMSXのコンポーザーによる資産はすべて利用でさますし、ジエネラルMIDIフアイルにも対応しています。すべてのMIDI音源に対応していますので、今までより利用範囲は広くなっています。
 またビクター音楽産業から発売されたミュージアム・エチュードとミュージアム・スタディーは、CAIを想定した教育用ソフトです。 残念ながらコンピューター内蔵音源にしか対応していませんが、学校現場のシステムから考えれば現実的かも知れません。
 以前に紹介したアメリカのMIEは145曲のカリキュラムによるナン・グレーディッドの学習システムでしたが、ビクタ−のものは日本の学習指導要領に準拠した形になっています。ここで考えなければならないことは、実際にコンピューターが音楽教室に導入され利用される時の台数とか授業展開です。悲観的な見方かもしれませんが、アメリカ等の先進国の例を見ても、生徒に一人1台ずつコンピューターが与えられる(音楽の授業だけのために)ような状況は無いでしょう。
 40人学級(アメリカは30人)という学級定貫から考えても、20台を二人で1台とか14台を三人ずつで共用とかの形態が現実的でしょう。CAIの形態は教科や教室ごとではなく、複数の学級や学年あるいは教科が一つのCAI教室をやりくりして共用するのが普通です。
 したがっ てCAIを想定したソフトは1対1ではなく1対2または1対3という複数の生徒を対象にしたソフトであるべきです。その意味でMIEのコンセプト(1対30)はしっかりしています。CAIは岐阜の川島小学校をはしりとして、筑波の竹園小学校で本格的に展開されましたが、停滞または挫折しているというのが正しい評価でしょう。
 音楽教育のDTMは、冒頭の三つの機能だけではこの状況は変えられません。多分音楽教育に必要なDTMシステムは複数またはグループを対象としたものに落ちつくでしょう。となるとそのようなソフトなりシステムはまだ市販されていませんので、自作なり改編を必要とされるわけです。 ヤマハのアンサンブル・オルガンは六人掛けの竜子楽器ですが、近い将来MIDI端子付きのものが発売されます。そうなればMIEのような集団を対象としたDTMが展開できるようになるはずです。
 あるいは既に市販されているシンセサイザーを端末とするDTMもソフトが必要となります。そのような場合自作や改編ができると良いと思うのです。今アメリカのDTMは「テンポ・トラッキング」という技術を急速に向上させています。コンピューターミュージックにありがちな「機械的なテンポ」ではなく、ライブ演奏のようなテンポのゆれを、コントロールする技術です。
 マックス・マシューズ(スタンフォード大学)の提唱する「ラジオ・パトン」は二本のマレットを駆使してテンポや音量、音色などをリアルタイムにコントロールするもので、予め作成されたMIDIシーケンス・データを実にフレキシブルに演奏できます。MAX(マックス・マシユーズの名前からとつた)やインタラクターのような言語で今試みられているソフトの殆どがこのテンポ・トラッキングです。
 カーネギー・メロン大学のロジャー・ダンネンパーグが、ピツチ・トラツキングとテンポ・トラッキングをAI(人工知能)で発表したのがそのはしりですが、このテクノロジーを音楽教育に利用できると子どもたちの音楽の授業で「指揮」の真似ごとやテンポ・コントロールの技術を展開できるようになります。
 アンサンブル・オルガンにおけるグループ学習にコンピューター技術を応用すれば、グループ構成員のコミユニケーションとしてコンピユーターが介在することでしょうし、エンマ帳の代わりにCM1技術が教師の指導や評価を助けてくれることでしょう。
 ピアノプレーヤのような機器のソフトもフロッピー・ディスクではなくMO(光磁気ディスク)のような大容量の記憶媒体を使うことにより、いちいちディスクを差し替える事無く手元のコンピューターからデータを送り出すことが可能になります。既にカナダのあるディーラーは、このシステムをマックを使ったピアノプレーヤ(現地ではディスクラビァ)のデモンストレーションに利用できるハイパーカードのプログラムを自作しています。これはハイパーカードが比較的簡単にアマチュアにもプログラムが組める言語で構成されているからです。
 ハイパーカードによる音楽ソフトの代表はパスポートデザインのハイパーミュージックですが、これにMIDIファイルを蓄積してゆくだけでも立派な自作ソフトになると思うのです。もちろん前にも述べたCD−ROMは、もっとデータの多様的な利用ができることは言うまでもありません。


《グループ学習のDTM (1992-6)》

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 前号で生徒一人ずつに一台のコンピューターが与えられるケースは、恐らく今後も特殊なケースを除いてまずないであろうと述ぺました。一部の学校では二人に1台くらいの割合でコンピユーターが使えますが、音楽教室だけのために人数分コンピューターを揃える学校はまず考えられません。
 となれば、音楽教室のコンピユーターは一台を想定して考える必要があります。一台のコンピユーターは@教師の耳や目の延長として考える、A教師の口や手の延長として考える、の二つの機能を持つことができます。
 @では、机の巡視のような機能や、MLのモニターのような機能を指します。アコースティックな楽器では、一人の生徒に注目するためには他の生徒を沈黙させるか、無視するかの方法を採らなければなりませんでしたが、電子楽器、特にMIDI信号をやり取りできる楽器の場合は、コンピューターを介在させることにより演奏を電気信号として個別(最大16人)に、しかも同時に扱うことができますから、聖徳太子のような耳ではなくても、誰が何を弾いているかをチェックすることができます。現在進んだ小学校では六人掛けのアンサンブルオルガンが導入されていますが、残念ながらまだMIDIは内蔵されていません。今後MIDI対応のアンサンプルオルガンが導入されると、一台のアンサンブルオルガンを利用している子供達の演奏を個別に、しかも同時にチェックできるようになるのです。誰がどんな音を鳴らしているのか、どんな強さで弾いているのか、どんなタイミングで弾いているのか等の情報をコンピューター1台で一気に処理できるのですから、授業の効率は飛躍的に向上します。そして余った時間は本当に教育的なことや、音楽的体験のために使えるのですから一石二鳥です。
 インタラクターというプログラム言語で書かれたプログラムでは、同時に八つの独立したテンポを識別できますので、六人の子供の演奏データくらいは簡単に個別に識別できます。市販のDTMソフトでは残念ながらそのようなものはありませんので自作しなければなりません。しかし、インタラクターは初心者でもオペレータをつないでいくだけでプログラムすることができますので、コンピユーターの内部アドレスやI/Oを何等意識することなく、MIDIマネ−ジャーが全てを取り仕切ってくれるのに任せておけば良いのです。
 プログラムができれば、後はMIDIケーブルを切り替えるスイッチヤーだけをアンサンブルオルガンの台数分に応じて自作すればOKです。個々の演奏データを音符表示したい時は、市販の音符表示ソフトをサブルーチンに組み込んでおき、MIDIマネ−ジャーを通して取り込まれたデータを音符でモニターできるように呼び出してやれば良いのです。あるいは、予めパート別に作成したアンサンプル演奏のデータと、自動的に照合して演奏の正碓さをチェックすることも可能です。
 これらの作業は現在では電子楽器のメリットを活かしきれていませんので、教師がヘッドフォンを持ち歩いて処理しています。
 Aは@の逆で、教師から同時に別々のソースを複数のアイテムに対して送り出す機能で、正に「口八丁手八丁」の場面です。一人一人の子供に対してその演奏すべきお手本や、アンサンプルとして演奏されるバックグラウンドを送り出せれば、子供の「個別学習」は一展保証されることになるでしよう。
 この場合もインタラクターは人つの異なるテンポが管理できますので、ある子供には早く、ある子供にはゆっくりとそのソースを送り出すことができます。
 例えば、教師側から送り出されるメロディに対してふさわしいベースを付けるというような授業では、子供の能力に応じたテンポでテキストを送出することが可能です。 教師側コンピユーターは1台でも余力を持ってこれを処理することができます。生徒側の楽器がシーケンサー付きのシンセサイザーならバルク・データを送り出すことにより、前の授業で誰がどう使おうとシンセサイザーを初期設定にリセットすることも可能です。しかも、その楽器の側まで行かなくても良いのです。
 もちろん演奏データをそのシーケンサーに送り出すことも可能です。このように一人一台でなくてもMac程度のコンピユーターで、同時に16人くらいは十分相手にすることができます。音楽におけるグループ学習の最たるものは「アンサンブル学習」ですから、その同時多発型の生徒の学習活動をマネージするのにコンピユーターほど適したものはありません。個々の楽器の側まで行かなくても、教師のコンピユーターからのリモートコントロールでほとんどの指示や指導ができるのですからやってみない手はありません。
 ただ、このインタラクターやMAXのような視覚言語は独習以外に方法がありませんので、自作のための努力はかなり厳しいものになるでしょう。しかし現在のDTMソフトのほとんどが、学校教育用ではなく個人スタジオや商業用に設計されているため、本当に授業や指導や管理のためのソフトは、少々苦労をしてでも自作せざるを得ないのです。
 MIDIマネージャーが使える(つまり専門的なMIDI操作ができなくてもよい)コンピユーターの代表は何と言ってもMacです。しかも、スタンダードMIDIを扱いますので、音楽ソフトそのものは市販のデータがそのまま使えます。


《ハイパーカードの利用 (1992-7) 》

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 前号までで、MAXやインタラクターを利用した自作プログラムの可能性を述べてきましたが、読者の誰にでもできることではないというご意見もあるかも知れません。そこでマッキントッシュの最も有名なアプリケーションである「ハイパーカード」の利用を考えてみましょう。
 ハイパーカードは直線型のプログラムではなく、構造化プログラムと呼ばれ、オブジェクト指向のプログラムであるといわれます。カードと呼ばれるものにフィールドやポタンを設計(コピーするだけでもよい)して、それぞれのカードやフィールドやボタンに機能を持たせたものをプログラムとして実行できるのです。前に紹介したMIEというソフトはこのハイパーカードで設計されたプログラムなのです。
 最初に現れる画面は「ホームカード」と呼ばれるメニュー画面で、画面上のオブジェクトをクリックするだけでその作業を実行するカードに移行します。目的のカードに移行すると、そのカードに書き込まれてあるプログラム(通常は見えない)が実行されるというわけで、全体のプログラムが未完成でもカード単位のプログラムは動きます。ということは少しずつプログラムを完成させるのに適しているわけです。このハイパーカードは利用者のレベルに応じて1から5までの五段階の使い回しができるようになっていますかち、初心者かち上級者までレベルに応じた使い方ができます。
 レベル5に設定すると、ハイパートークと呼ぶスクリプト(記述言語)を使ったプログラムを@ポタン、Aフィールド、Bカード、Cバックグラウンド、Dスタックなどに書き込む事ができます。既に市販されているハイパーカードを使ったMIDIメディアをうまく利用すれば自作のプログラムができるわけです。このハイパートークという言語はベーシックと極めて似ていますが、より一屑自然な英語の文章に近いので理解しやすいと思います。

  ・手順

 まず、自分用の新しいスタックを作成します。これはメニューから選んで名前を付けてやるだけの作業ですから簡単です。次に例えばパスポートデザイン社の「ハイパーミュージック」をオープンします。
 このハイパーミュージックはハイパーカードで構築されたソフトですから、レベル5のパワーキットを使えば簡単にそのスクリプト(プログラムリスト)を見る事ができます。 このハイパーミュージックには素人には手に負えないMIDIコントロールのカードがありますので、一番簡単なのはこのプログラムの中にある「コピー・トウ・スタック」というボタンを実行してMIDIセットと呼ぶMIDIコントロールのプログラムを自分のスタックの中のカードにコピ−してやればよいのです。 これだけで自分のカードにMIDI演奏プログラムを載せることができます。もちろん他の例えば「MIDIプレイJ」等でもスクリプトをコピーすれば同じことができますが、どちらのソフトも演奏機能しかありませんので、MIDIデータを作成するにはトラックスやパフォーマー等のソフトで、予めデータを作成しておく必要があります。
 これらのハイパーメディアにはホームカードにリソースプログラムとしてMIDIドライブのソフトが書き込まれていますので、自分で作る必要は全くなく、随分楽にプログラムが作れます。もちろんハイパーカードのパックグラウンド等については自分で設計できる事が朱件ですが……。 音楽教室に自動演奏ピアノやMIDI音源等がある場合、教材や伴奏などのMIDIデータをランダムに選んで演奏させるようなソフトをこれで構築できます。いちいちフロッピーを差し替えなくてもハードディスクやMO(光磁気ディスク)などから瞬時に呼び出せるので、スピーディーに教材や伴奏の演奏が得られます。

  ・問題点

 構造化プログラムという言葉をよく耳にしますが、IFやGOTOなどの分岐やサブルーチンを持つプログラムはすべて構造化プログラムであると言えます。従ってCやパスカルだけが構造化プログラムではなくベーシックも立派な構造化言語なのです。ただ、ハイパートークはカードやボタン毎に独立したオブジェクトとして存在しているので、それらをサブルーチンのように本体のスタックスクリプトに書き込んでやる必要があります。もちろんカードを呼び出す毎にそれを独立的に実行させることも可能ですが、理想から言えばスタックにスクリプトが書ける方が良いでしょう。
 それとピアノプレーヤのソフトのようにディスクのフォーマットが特殊なものではそれをMacやその他のフォーマットにコンパートしてやるソフトも必要になってきます。もちろん一曲ずつ実際に演奏させてパフォーマーやマスタートラックプロ等のソフトで取り込むという原始的な方法ですと問題なくデータの変換はできますが、演奏の実時間以上に時間がかかるので、曲数が多い時には大変でしょう。
 MS−DOSでもクイック・ペーシック等の言語でプログラムを組めばエイビィラポから発売されているDRV−MPU98というソフト(16000円)を使ってローランドのMPU−PC98をドライブすることができるので、PC−98のユーサーでペーシックやCに強い人にはその方が便利かも知れません。


《教師の教材作成支援ツール (1992-8) 》

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 教師が音楽の教材を作成する時に、最初に頭に浮かぶのは「楽譜浄写」の機能です。本誌でもノーテーターの可能性という題でシリーズが展開されていますが、ノーテーターのソフトは音楽の教師が切望するソフトです。この連載28回になり約二年半も経たわけですが、その間にいろいろな「ノーテーター」が出現しました。もっとも古典的なノーテーターソフトはダイナウェアから発売されている「プレリード」(現在バージョンG)です。PC98のユーザーならば、当時の100000円以上もする特異なソフトとして記憶があるでしょう。当時としては大変珍しいプルダウン・メニュー方式で、マウスを駆使して入力する完成度の高いノーテーターソフトした。難を言えば、隣り合う音符の表現ビームの角度などに問題があるわけですが、十分使用に耐えるものでした。
 「譜面美人」は、リットーミユージックから発売された同じくPC98用のソフトですが、符頭の大きさがやや貧弱なのと音階のような連続する音符に対するビームが常に水平方向にしか引かれないという視覚的なデメリットがあり、現在若干のバージョンアップされたものが同じリットーミユージックの「MIDIブレイン」に搭載されています。
 「ミュージックプロ98」というソフトも楽譜印刷の機能がありますが、任意のサイズの小節が設計できるという他のソフトにはない機能がありながら、出力結果はこまぎれになり勝ちで、あまりよくありません。
 先頃発売のヤマハの「ハローミュージック」に付属のソフトは力ワイの「サウンドパレット」の付属ソフトに印刷機能などをくっつけたものですが、解読不明の楽譜が出てきます。「バラード2」やその他の音符入力シーケンスソフトも楽譜印刷は可能ですが、一ページに印刷できる小節数の制限やビームの向きなど、とてもそれを見ながら演奏できる楽譜は出てきません。
 カモンのソフトも楽譜出力をしますが、同様です。結論から言えば、PC98用ならば依然として「プレリユード」に軍配が上がります。
 このプレリュードのお手本になったのがマックのソフトで、マーク,オブ,ザ・ユニコーン社の「プロフェッショナル・コンポーザー」でした。最大40段までの楽譜が作成でき、ワープロ感覚でマウスを使って入力できます。入力した結果を「パフォーマー」で演奏させることもできるという、優れた機能を持っています。
「アンコール」というソフトも4パートまでの楽譜でしたら、かなりきれいに印刷します。  しかし、何と言っても圧巻はコーダミユージック社の「フィナーレ」です。
その名の通り、正しくノーテーションのソフトではファイナルのソフトでしょう。
最大の機能は、ハイパースクライブ・ツールやトランスクリプション・ツールを使ったMIDI楽器の生演奏を好きなテンポで弾いたものを採譜する機能です。ペダルや端っこのキーをタッピング用にアサインしておけぱ、ルバート演奏やリタルダンドなどの時、それに合わせてタッピングをするだけで、正しい楽譜が採譜できるのです。あるいは演奏を一度バッファに貯めておいて、後からタイムタグをタッピングしてやると、正しい楽譜がテンポ変化に関係なく採譜される機能があります。さらにピアノ譜の右手と左手を別々に採譜することもできますし、和音の中から特定のパート譜を抽出することもできます。
 最大の難関は、日本語マニュアルがツールの使い方だけしか無いことで、個々の使用目的に応じたツールの使い方は、英語のマニュアルに頼らなければ分からないことです。その意味では、英語の読解力も必要となります。(96年現在のヴァージョンでは完全な日本語表示と日本語マニュアルになっています)
 楽譜専用のシステム (本当はもっといろいろなことができる)として、ミディアパックのC−LABノーテーターが有名です。本体はアタリのコンピューターですが、ご存知の通りCPUはマックと同じですから、性能に変わりはありません。とにかく安いシステムを希望される向きにはお勧めのものです。その取扱いやパフォーマンスについては、ミュージック・トレード誌連載の「ノーテーターの可能性」をバックナンバーから熟読してください。
 フィナーレのように生のルバート演奏は採譜できませんが、ワープロ感覚のエディットと最大32段の印刷能力は大きなメリットです。ピアノ譜のように音が右手の段から左手の段にまたがるような場合、任意の音を曲線で仕切ってやれば、上下どちらかの段に移動できる機能等も実際的で実用的な機能です。さて、いろいろ紹介しましたが、結論を言いますと、経済的に余裕があり、多少英語が分かる場合はマックのシステムにレーザーライターを加えて、「フィナーレ」を利用するのが一番です。
 フィナーレのポストスクリプトファイルは、そのまま印刷の版下になります。従って、上等のプリンタ−がなくても、サービスショップで印刷だけしてくれるので、それを利用すればもっと安くなります。すでにPC98を利用している場合、「プレリュード」が最高です。限られた予算で最高の仕上がりを期待する場合は、迷わず「ミディアパック」です。一部のマニアの間ではアタリコンピユーターでマックのソフトを動かしている人がかなりいるそうです。
 「MOSAIC」の楽譜は画面上の任意の楽譜をコピー&ペーストで他のワープロ・ソフトに配置することができますので、試験問題をワープロで作成するときなど大変重宝です。ただしプリンターがポストスクリプトであればという「フィナーレ」と同じ条件がつきます。


《教師の教材作成支援ツール(2)(1992-9) 》

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 前号ではノーテーター・ソフトを中心に教林作成について述べましたが、今月号では音源を使う教材について話を進めます。最近ヤマハから「ハローミユージック」というシステムが発売になりました。それまでの「ミュージ郎」や「ミュージくん」「サウンド・パレット」に加え新しいソフトのラインナップにより、DTMの世界もいよいよ充実してきました。キーボードの付いていない音源ユニットを駆使するDTMでは文字通り机の上であらゆる音楽制作が可能になります。音楽の教師にとって歌唱や器楽の伴奏を練習することは、かなり準備に努力の要る作業であったわけですが、DTMの出現により大幅にその作業が軽減されることになります。

1、演奏能力がかなりある場合

  市販のシーケンス,ソフトが使えます。ただ、ソフトによっては演奏データを解析するのに非常に時間がかかったり、クォンタイズの精度の関係で正確に記録されないことがありますので、ソフトの選択は大切なことです。
 生演奏を記録する方法のメリットは、演奏に付随する各種のコントロール信号(ボリユームやベロシティー、ピッチベンド等)が同時に記録できることです。しかし、これは同時に膨大なデータが発生するため、メモリーに十分な余裕がないと、途中でコンピユーターが暴走したり止まってしまったりする原因にもなります。
 「ハローミユージック」のマック版についているソフトはEZビジョンですが、四分音符=480ユニットの分解能と16チャンネルのパート数を使えば、ほとんどの音楽の精密な記録は可能です。
 最大64トラック(チヤンネルではない)使用できる「マスター・トラックプロ」はパート数の多い曲の制作に威力を発揮します。有名な「パフォーマー」はトラック数に関してはメモリーの許す限り無制限で、使用可能なMIDIチャンネルは、最大で521チャンネルという実用の限界を越えた記録も可能です。同じ価格で「ビジョン」も入手できますが、機能的にはパフォーマ−の方が勝ります。また、パフォーマーは「プロフェッショナル,コンポーザー」と併用できるため、前号のノーテーターとしての機能も活用できるので便利です。

2、ステップ入力が得意な場合

 コンピユーターミュージックの醍醐味は、何といってもステップ入力でしょう。弾けないフレーズやパッセージはもちろんのこと、指の届かない音程でもステップ入力なら簡単です。前述のMIDIレコーディングソフトにもステップ入力の機能はありますが、数値入力が主体ですので直視的なソルフェージユは無理です。
 カワイの「サウンド・パレット」やヤマハの「ハローミュージック」PC版では共通のソフトを使っていますので、音符の分解能やトラック数は同じですが、この種のソフトに共通している特徴である音符入力の機能があります。この音符入力のシステムにも二種類あり、ミユージックプロ98やミユージコンポーザーのように、音符以外の情報(ダイナミックやテンポ等)も楽譜上に表示されるものと、バラード2やミユージ郎のように別トラックとして表示するものがあります。音符以外の情報を多く入れると、1画面に1、2小節しか表示されないという欠点は、演奏情報すべてが見えるという長所にもつながり、一概にどちらが良いとはいえません。
 マック版の「バラード」はMIDIキーボードからの入力に対してレスポンスが悪く(現在のヴァージョンでは改善されている)、使いにくい反面、画面上で編集や修正する機能は極めて高く、PC版のバラード2よりは使いやすい面が多くあります。
 RCMのソフトも数値入力でありながら画面右に常に音符が表示されるので、馴れればこれが一番使いやすいとのユーザーの声も多くあります。楽譜の見やすさでは、「バラード2」か「ミュージックプロ98」が一番でしょう。微妙な表現(シングル・トリガーのトリル等の表現)をしたいときはRCMが最適です。
 一般的に言えることは、音符入力やステップ入力のシーケンスソフトは、音符の分解能が低くトラック数も少ないのが普通です。かつてMSXでミユージコンポーザーを愛用していた人には、ヤマハ新発売の「ミュージコンボーザー」(現在は廃版)が操作や概念で共通部分が多くて便利でしょう。忘れてはならないのがQX3のようなシーケンサーです。馴れるとこれが一番便利なことはいうまでもありません。QY10のようなポータブルなものでもかなりの演奏が可能です。

3、難しいことは御免という場合

 音楽データやMIDIデータを市販のもので済ませてしまいましょう。単純にフロッピーから読み込んで演奏させるだけなら、前述のどのソフトでもOKですが、MIDIプレイやハイパーミュージック等のマック用ソフトなら演奏させるだけの機能ですが極めて簡単です。要するに自分では演奏したり記録したりはしないケースですから、豊富なソフト(演奏データ)が揃っていることが条件になります。
 その意味ではヤマハのピアノプレーヤ用のソフトや学校用オルガンのSE5000用が一番豊富に揃っています。それらはE−SEQモードで記録されているので、ヤマハ製品以外の機械やソフトで再生するにはフォーマットを標準MIDIファイル等に変換してやる必要があります。その場合、ミュージコンボーザーに一度ロードした後、希望するフォーマットでセーブするという方法が簡単です。


《教師の教材作成支援ツール(3)(1992-10)》

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 さて、DTMの機能の大きなものに「MIDIデータの編集や修正」があります。現在市販されている音楽データをうまく利用できればこれに越したことはありません。ところが、MIDIファイルのフォーマットはソフト毎に微妙に異なることが多く、あるソフトのためのデータは別のソフトでは使えないというやっかいな問題があります。
 もちろん原始的ではありますが、MIDI to MIDI即ち二台のMIDI機器を用意して一方を送り手に設定し、もう一方を受け手にした上で直接MIDI信号でやりとりすればこの問題は解決しますが、クォンタイズの精度やマルチ,トラックの場合に問題を生じます。そこで現在主流になりつつある「標準MIDIファイル」のフォーマットに変換するコンバーターが必要なツールとなってきます。MIDI信号というのは次のような順番で送り出されます。

  @ステータス信号 キーオン
(9という16進数)+MIDIチャンネル番号(0からFまでの16進数)

  Aもし必要なら次の信号 コントロール・チェンジ
〈B+MIDIチャンネル番号の後にデータ7ビット) プログラム・チェンジ(C+MIDIチャンネル番号の後にデータ7ビット) アフタータツチ(D+MIDIチヤンネル番号の後にデータ7ビット) ピッチベンド(E+MIDIチヤンネル番号の後にデータ7ビット)

 Bデータ群 キーコード
(00から7Fの127から)ベロシティ(00から7Fの127段階)

 Cノート・オフ信号
(9という16進数)+MIDIチャンネル番号(0からFまで)+0または、(8という16進数)+MIDIチヤンネル番号(0からFまで)+64

 これらの信号はMIDIクロックとセットになって、記録されたり送り出されたりします。例えば、90 60 64 はチヤンネル1の中央のCをベロシティー100で鳴らせという意味であり、C1 33はG3はチヤンネル3の音色を51番に変更しなさいという意味になります。
 これらのタイミングを管理するMIDIクロックを実時間通り記録する(何の信号も来ない時はF8というコードを出力し続ける)ものやオンとオフのタイミングだけを時間軸上の絶対値で記録するものなどがあり、一般に誤解されているようにテンポ情報や音符の長さの情報としては記録も送出もしません。
 PC−98シリーズのMME(Multi Media Extention)は再生だけなら現在でもDOS/V上でほとんどのMIDIファイルを演奏しますが、現在国内の市販音楽データのほとんどはRCMのフォーマットになっているため、それを標準MIDIファイルに変換するCVSやCVR、 SNG2S、ESEOCVS、JUKEBOX、SC等のソフトをBBSで入手すればもっと目的にかなった変換ができるでしょう。
 このBBSも ニフティ・サーブやPC−VAN、マスターネット等に500曲以上がすでに登録されています。
 マックのソフトにMS−DOSのファイルを読み込ませるには、ちょっとしたテクニックが必要です。まず、アップル,ファイル・エクスチェンジを立ち上げてMS−DOS→Macのモードで変換します。このままではファイル・タイプが「TEXT」になっていて、マックで読むことはできませんので、SUMのファイル,ユーティリテのSUMTools等を使ってファイル・タイプを「Mid」と番き換えてやれば読めるようになるばかりか、演奏も可能です。
 「MaC郎」という五千円のソフトでは、どんなタイプのファイルでも変換してしまいますのでこの方がお得です。
 「Band in a Box J」のバージョン5というソフトは、調とテンポを決めて、後はコードネームを小節や拍の単位で入力するだけで、いろんな曲の伴奏データを自動的に作ってくれます。結果は標準MIDIファイルとして出力しますので、別のソフトに読み込んで旋律線やカウンターラインを追加してやれば簡単に教材の伴奏譜ができてしまいます。
 このようなソフト間のデータ交換を標準化したものが、スタンダードMIDIと呼ばれる標準MIDIなのです。まもなくほとんどのソフトがこのスタンダードMIDIファイル対応になりますので、DOSの違いによる交換以外は必要がなくなるでしよう。ピアノプレーヤやSE−5000などの教育用ソフトはESEQというMSX互換のモードですが、ヘッダーの39バイトを無視すれば普通のMIDIファイルとして使えます。


《凌ぎ合うソフト (1992-11)》

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 この一年以内にバージョン・アップしたDTMソフトは両手の指では足りません。これはハードの性能が極めて向上し、操作環境が大いに改善されたこととも関係がありますが、ユーザーの層が厚くなったのとユーザーのレベルが高くなったことが関係しています。例えば、「パフォーマー」で有名なマーク・オブ・ザ・ユニコーン社は今回「パフオーマ−」のバージョンを4.01に上げましたが、この背景にはユーザーからの無理とも思える注文に可能な限り対応しようとする姿勢があるからです。同社は「コンポーザーズ・モザイク」という「プロフェッショナル・コンポーザー」のアップグレード・ソフトも発表しましたが、これは実際に楽譜を出版したり発表する人の殆どが「ノーテーター」の機能を持つコンピユーターを使い始めたという二ーズに対応したわけです。つまりDTMは趣味や遊びから「業務用」の時代に入ってきたのです。これからDTMを始めようとする人にとっては、目移りがしてソフトの選択に大いに迷うことになってきました。
 このシリーズを書き始めた頃には満足なソフトも少なく、筆者もお奨めできるものが少なかったのですが、もうそろそろ決定的なものもありますので、今回は目的別のソフトをご紹介しましょう。

教材用楽譜印刷

 ノーテ−ターのソフトということになりますが「できないことが無い」と豪語する「フィナーレ」が頂点にあります。しかし実際には「できないこと」があり、それが特に教材作成では大変重要な「日本語」による「歌詞」入力なのです。これは多分間もなく発表されるニユーバージョンでは改善されることになると思いますが、現状ではエヌフォー・メディア研究所(エ03−5360−8171) の永田晃氏がPDSで提供す「Quartet」 というソフトを利用することで、カタカナかひらがなで印刷するしかありません。(Ver.3.2Jでは漢字も扱えるようになった)分かりにくかった英語マニユアルも日本語版が出ましたので、一挙に分かりやすいものとなりました。MIDIマネ−ジャーとの相性が悪かった印刷機能も改善されるようです。その点「コンポーザーズ・モザイク」は日本語にも対応しているので便利かもしれませんが、まだバージョンが若いので未知数の部分もあります。
 パック商品としてお馴染みの「ミディアパック」はアタリ・コンピユーターを中心とする完壁な楽譜印刷システムです。ページ番号が変な所に出るという欠点も間もなく解消されるようですから、楽譜印刷以外は何もしないという向きには絶対お奨めのシステムです。もちろん日本語の歌詞も入力できます。「アンコールjも大幅に改善されて使いやすいものになっていますが、印刷結果はやや不満が残るかもしれません。

教材用の演奏データ作成

 シーケンスソフトが必要です。条件として@操作の簡単さAエディット機能の充実B分解能の高さC演奏機能の高さ等があげられますが、すべてを満たすソフトは当然マニュアルが分厚く、覚えなければならない操作も増えます。その意味での頂点は「Performer」ということになるでしょう。
 私個人としては「Master,Truck・Pro」(PC98用、マック用を問わず)通称「プロ4」が好きです。自分がしようとしていることの背景に必要な操作や環境がすべて画面上で確認できる点や、操作の種類が多くない点で単細胞向きです。PC98用では「ハローミユージック」が学生に好評で、「バラード2」(現在はバラード3)と肩を並べています。編集の能率ではカモンミュージックの「RCM−98」には及びませんがハローミユージックは教育用としてはかなり期待できます。マック用のバラードはエディットの最中にハングアップしてしまったり「予期しない原因で」勝手に終了する病気が今度のバージョンアップでは治療された模様です。

両方ともやりたい

  一本のソフトですべてができる完壁なものは「Finale」しかありません。標準MIDIファイルにも対応していますので他のソフトからのデータ移入も完壁です。特に「トランスクリプション」と「ハイパースクライブ」はリアルタイム入力に要求される完壁なテンポが必要なく、難しいところはゆっくりと演奏しても正しく記録されますので演奏能力が少々心配でもOKです。
 タッピングと呼ばれるこの機能は他のソフトでは「パフォーマー」と、もう廃版になったヤマハのCIにしかありませんが、今世界のコンピユーターミユージックの目指している「テンポ・トラッキング」の機能として注目されています。二本のソフトでやりたい場合は@「Performer」と「Composer's,Mosaic」の組み合わせやA「Pro4」と「Finale」が完壁でしょう。いずれの組み合わせも、とても初心者や中級者向きとはいえない複雑なものですが、使える機能から順にマスターしていけば、いつのまにかワープロのように簡単に操作できるようになるでしょう。

※注意 あれやこれやと色々なソフトに手を出さないで下さい。同じ操作でもソフトによっては違う結果になったりしますし、せっかくのデータが別のソフトでは生かせない等の不幸を招きます。要は自分に合うソフトを完壁にマスターすることです。一見複雑そうなソフトでも、できることだけを完壁にマスターすれば次のステップに進むのは簡単です。


《92年までを振り返って (1992-12)》

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 今年も国際コンピユーターミュージック学会(ICMC)がアメリカのサン・ノゼで開催されました。昨年はカナダのモントリオールでしたが、昨年に比べて日本人の参加者が多い大会でした。この会に出席していると、およそ現在コンピユーターミユージックがどのようなテクノロジーに支えられ、どんな方向を目指しているのかが分かります。そこで今月号では、それを紹介したいと思います。

 @音源のDSP化

 現在MIDIはGM即ちジェネラルMIDIの規格で、メーカーが違っていても音色の並び順や音色は同じプログラム番号になっています。しかし、実際にはメーカー毎にその音色がかなり違うことはご存じでしょう。
 ICMCではこれをハードウエアではなく、ソフトウェアで解決しようとしています。どういうことかと言いますと、○○方式と呼ばれる各社が得意とする音源チップではなく、例えばモトローラ社の56001のようなDSPチップを音源として、それにソフト側からデータを送ることにより誰がどんな裸作をしても同じ音が出るように しよう、というものです。具体的にはCDの表面に刻まれたトンツ−信号と同じような信号をいきなり作ってしまおうというわけで、その信号を作るのがDSPなのです。そのためにはVHLL(ヴェリ・ハイ・レヴェル・ランゲージ)が開発される必要があり、その意味ではまだしばらく開発に時間がかかるようです。しかし、もしこれが実用化されますとGMよりはるかに優れた標準音源になることは目に見えていますし、すでにそれを見越してアタリの新しいコンピユーターには830ドルであるにも拘わらず、DSPが標準装備されています。文字通りコンピューターミユージックは、コンピユーター自身が音を出すようになるのです。
 スタンフォード大学のペリー・コックらによって開発中の「ウェーブガイド」をはじめとするDSPは、楽器音のみならず人間の声や言葉までも発音してしまいます。

 Aマルチメディア

 ハイパーカードは文字・画像・音・MIDI情報などが、カード形式のスクリプトと呼ばれるプログラムをマウスによるクリックだけで実行してしまう、ある意味ではマルチメディアの先輩格でしたが(勿論まだまだ進化する)、動画やカラー画像を高速で処理するクイック・タイムの出現でビデオやレーザーディスクに匹敵するソフトがCD‐ROMで発売されはじめました。
 ヴォイジャー社の「ハミングバード」(年末発表)はマクロ・マインドの「ディレクター」による新しいCD・ROMで、画面の美しさもさることながらボタンをクリックすることにより任意の音楽フレーズが演奏されるという教育的用途を暗示する ものです。
 ノースウェスタン大学のリチャード・アッシユレーも同様のアイデアをハイパーカードで考案しています。それは画面上の楽譜の任意の小節をクリックすると、その部分が演奏されるばかりか、それらの小節をドラッグして好きな順に並べ替えると、その通り演奏してしまうという作曲の学習にすぐ使えそうなものもあります。

 Bテンポ・トラッキング

 コンピユーターミユージックの欠点は、その演奏があまりにも機械的になり過ぎるということでした。例えば、教室で伴奏ソフトを演奏させる時などに、ここを少しゆっくりとか、ここはもっと速くというような微妙なテンポ変化をリアルタイムに行うにはまだ少し無理がありましたが、ロジャ−・ダンネンバーグのソフトではテンポはおろか多少のバリエーションを演奏しても自動伴奏がついてくるという優れモノです。入力はMIDI楽器でなくても良いので歌の自動伴奏などに威力を発揮するでしょうしヽ指揮の練習をすべての子供ができ るようになるでしよう。現状では歌に合わせて指揮をしているのが普通ですから、大きな使い道があります。
ピッチ・トラッキングやテンポ・トラッキングの基本特許はCODA社が押さえています。従って研究室段階の発表は良いのですが、商品化して販売するためにはCODA社の特許に触れる訳ですが、現在いかなるソフトに対してもCODA社は一切の特許使用を認めていません。この基本特許という考え方はアメリカ特有のものでただ「空を飛ぶ機械があれば」と考えて出願するだけであらゆる航空機の製造がこれに引っかかってしまうという単純かつやっかいな物なのです。CODA社のこの姿勢は一切の特許を申請せずシンセサイザーの普及発展を願ったDr.Moogとは大変な違いです。筆者は現在アメリカのシンシナティ大学教授のワインストック(Frank Weinstock)と共同研究でピッチ・トラッキングやテンポ・トラッキング、さらにダイナミック・トラッキングを含めた、しかも標準MIDI ファイルがそのまま使えて、同時に二人(あるいは両手)の情報を処理でき、しかも演奏はどこから初めてもどこを省略しても或いはどこを繰り返してもジャンプしても追従するソフトを既に完成させていますがCODA社はこれを発表することを許しません

 Cネットワーク化

 サン・ノゼの公立学校はすべての教室が全市のネットワークで結ぱれています。コンピューターの多くの機能の中で「通信」の機能があることは知っていても、意外と有効に利用されていません。教材の共有化や子供の記録のデータベース化などは学校予算の効率化に大きな効果を発揮するでしょうし、教師間のコミユニケーションを高めることによる学校格差の解消に役立つことでしよう。


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