3、 研究の概要 (1) 文献研究 ブラジルの教育について ○ ブラジルの国家自体がまだ歴史が500年ということもあり、歴史的にみても、まだまだ成熟されているとは言えない。特に、初等教育に対して更なる改善が必要である。 ○ ブラジルでは、義務教育は無償である。特徴的であるのは、落第制度が厳しいことであろう。そのぶん、能力のある子どもに対しては、飛び級制度や、編入制度など、とても優遇されている。 ○ ブラジルの教育の問題点について 貧富の差や、さらに地域格差、そして、政府や人々の無関心により、平等な義務教育はおこなわれていないのが現状である。 ブラジルの美術教育について ○ ブラジルの美術教育も歴史的にとても浅く、まだまだ発展途上といえる。公立学校では、美術科がおこなわれていない学校もまだまだ多く、さらなる改善が求められる。 (2) アンケート調査 ブラジル・サンパウロ市にあるコレジオ・ブラジリアにてアンケート調査をおこなった。コレジオ・ブラジリアは幼稚園から大学まである総合私立学校で、中流階層の家庭の子どもが通う学校である。 ○ 調査時期・対象 2000年5月・6月 コレジオ・ブラジリアの2年生・4年生・6年生 ○ 美術に対する意識調査 美術に対してどのような思いを持っているの かを調査することを目的とした。 ほとんどの生徒が、美術が好きだ、と答えているが、好きである理由に日本と比べて大きな違いがでた。美術的な技術の発達をより求め、そして現実的で実用性のある美術をもとめている。それは、誰もが学校にいける社会ではないなか、学校にスキルの習得を求める傾向があることを示している。それは美術においても同じである。 美術を好きな理由としても、「他の人よりうまく描けるから」という答えが多く、自分の能力を表現するブラジル人の国民性がよくでている。 ○ 描画調査 子どもの生活に、どのように美術が関係しているか、また、どのような題材で絵を描くのかを調査することが目的である。 モチーフに家族を選んだ子どもが多かった。ブラジル人がもっとも大事にするといわれている家族をモチーフにすることから、絵と生活は、関係が深いことがわかる。 描画のほうだが、全体的に、画面において小さく描く子どもが多い。そして、自由画の調査では落日の風景を描く子どもが多かった。しかも、山が二つあり、そこから太陽がのぞいているという、画一的な絵である。このような結果がでてしまったのは、同じ教室で調査を行ったからであると予想される。描くことにこまった子どもが隣の人の絵を見て真似をしたのではないか。調査方法をさらに検討する必要がある。 5、参考文献 1) ジャンジーラ前山「新基本法制定し、学校制度を改革−教育のいっそうの民主か目指すブラジル−」、2000,12,5、内外教育 2) 山下進 「ブラジル義務教育段階における機会均等の問題」1998 3) 木村近志 「ブラジルの所得格差と教育−最近の論考から−」1997 4) 金七紀男 住田育法 高橋都彦 富野幹雄 「ブラジル研究入門」2000,5,10 晃洋書房 p165−188 5) 堀内アリッセ泉 「ブラジル近代美術教育の史的研究−ブラジル美術教室運動を中心に−」 |
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