ブラジルの美術教育についての一考察
97602E 岩崎智子
指導教官 福本謹一

1. 研究の目的
 日本から一番遠い国ブラジル。日本の約23倍の広大な国土を有し、人種構成も、白人系54%、混血系34%、黒人系10%、黄色人種系2%といわれ、日本とは様相がまったく異なる。気候ひとつとっても、南部と北部では大きく違い、文化・習慣、何から何まで多様性を持っている。この多様性こそが、楽天的でダイナミズム、感情的で無頓着、という新しい特徴をもった“ブラジル人”という人種を生み出した。
現在、日本の教育は様々な問題を抱えている。いじめや、あれ・学級崩壊・不登校など、子どもはどんどんと追い詰められ、教師とも心の通い合いをすることができなくなっている。
さらに、今日本はいまだかつてない危機に追いやられている。グローバル化し、世界との距離が短くなっていている。そのなかで、このまま日本的な習慣や文化だけを持ち続けるのでは、世界から取り残されてしまうのは目にみえているのだ。世界と対等に付き合うには、日本人に欠けている自己表示力・発言力をさらに伸ばし、個性を発揮し、柔らかな発想でして物事を考える必要があるだろう。そして、それらを伸ばすために美術は効果的であろう。
しかし美術科は、週休二日制が始まり、総合的な
時間が導入されるなどの影響から、年々と時間数が減り、軽視されているのが現状である。
子どもからも、「落書きは好きだけど、美術の授業は面倒くさい。」「うまくかけないから嫌い」という声があがる。そもそも、美術科とは、個性と自由をモットーとし、そのなかから発想力や想像力を養うためにあるはずである。しかし、今日の日本では、学校全体が画一化され、均一化され、より効率をもとめた美術科の授業がいろいろな制約のもとでおこなわれているからにほかならない。
日本は島国である。日本には日本人しかおらず、そのなかで独自の思想や倫理観をもって教育を進めてきた。しかし、もはや日本だけにとどまり日本だけを見つめていてはなにも解決策が浮かばない。
それゆえ、日本とはまったく異なる文化を持ち、様々な文化を持つブラジルの教育、そして美術科を1年間のブラジル留学の経験を生かしながら、研究していく。そこから、日本だけで研究しているのとは異なる美術科教育を見る目が生まれるだろう。そして、美術科のよりよいあり方を考察していきたい。
1、 研究の方法
(1) ブラジルの教育について、これまでの歴史・教育制度・問題点について文献資料や、実際に調査してきたことより考察する。
(2) どのように、ブラジルの美術教育が歩んできたかについて、文献資料により考察する。
(3) ブラジル・サンパウロ市で行ってきた調査をもとに、どのように美術科が実践されているかを考察する。

2、 研究の概要(論文の構成)
第一章 ブラジルの教育について
(1) 歴史
(2) 制度
(3) ブラジルの教育の問題点
第二章 ブラジルの美術教育について
(1) ブラジル美術
(2) 美術教育の歴史
(3) 教科書から見る美術教育の傾向
第三章 ブラジル・サンパウロ市にコレジオ・ブラジリアにおける美術教育の実践例
(1) コレジオ・ブラジリアの概要

(2) コレジオ・ブラジリアの生徒の美術に対する意識調査
第4章  研究のまとめと反省
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