平成11年度卒業論文レジメ 藤原美和
子どもの玩具に対する思いについて

1. 研究の動機
 今日、子どもの遊びに欠かせない玩具は、あふれるほど多く存在する。テレビグームや電子ペットなど、時代と共に玩具も進歩している。そんな中で私は、木製の玩具を見ると、どこかなつかしさを覚え、ふと手にして遊んでみたくなる。そして、そんな風に大人になっても、なつかしさや愛着の残る玩具を作りたいと思った。しかし、ハイテクな玩具に囲まれた現代の子どもたちは、木製の玩具で遊ぶことができるのだろうか。玩具を作る以上、子どもたちに遊ばれることを大切にしなければならないと思った。子どもたちにとって良い玩具とはどのようなものなのか、また子どもたちが遊びたいと思う玩具とほどのようなものなのか、このような疑問から、玩具についての研究をするに至った。
 そこで、本研究では玩具についての理解を深め、実際に子どもたちの玩具に対する思いを調査しながら、子どもたちの求める玩具について考え、最終的には研究を生かした玩具の提案をすることを目的とした。

2. 論文の構成
 はじめに
 第1章 玩具と遊びについて
  第1節玩具の定義
  第2節 玩具の歴史
   1.起源
   2.発展
   3.語源
  第3節 玩具の分類
  第4節 遊びの意味 

第2章 子どもの遊びと玩具に対する実態調査
 第1節 調査の目的と方法
 第2節 調査の結果と考察
  1. 遊びと玩具の実態
  2.玩具の素材
  3.木製玩具の重要性
  4.遊ぶ欲求を誘発する玩具の要素

第3章 木製玩具の提案
 第1節 子どもの遊ぶ欲求を誘発する玩具のいろいろ
 第2節 子どもの遊ぶ欲求を誘発する玩具の提案

おわりに

3.研究の概要
 第1章では、玩具の定義づけをし、玩具の起源や語源などに触れることにより、玩具とはどのようなものであるかを考えた。そして、玩具の分類をすることで、さまざまな観点から玩具を捉えた。また、玩具と深い関わりのある遊びの意味についても考えた。
 第2章では小学校低学年(2年生)を対象に、現代の子どもたちの遊びや玩具についての実態調査を試みた。
 まず、遊びの中でどのような玩具が用いられているかを知るために、遊びの内容や遊びの場所、玩具の種類などを調査した。調査の結果から、実際に子どもたちがよく遊んでいる玩具は、流行のものやハイテクな玩具が大半であり、木製の玩具はあまり遊ばれていないことが分かった。
 次に子どもたちの木製の玩具に対するイメージを知るために、それぞれの素材に対するイメージの違いを調査した。木製の玩具は、プラスチック製や布袋の玩具に比べて、固い、動かない、古いなどのイメージがもたれ、全体的につまらないというイメージがあることが分かった。しかしそれは、木製の玩具が本当につまらないからではなく、現代の子どもたちの玩具の中から姿を消しつつあるからではないかと考えた。そこで、木製の玩具の良さや重要性について見直した。
 そして次に、子どもたちは玩具にどのような楽しさを求めているのかを知るために12種類の木製の玩具を用い、遊びたいと思う玩具を調査した。その結果から、子どもの遊ぶ欲求を誘発する要素には、視覚や聴覚などの感覚的なおもしろさ、創造的な楽しさ、集中力のいる抵抗度があると考えた。
 第3章では、第2章で考えた要素をもとに、木製の玩具の提案を試みた。まず、これらの要素を満たすと思われる創作玩具の作品を紹介した。それらを参考にして、創造的な楽しさと集中力のいる難しさを取り入れた玩具を考え、実際に試作を行った。

4. 今後の課題
 今回の研究を通して、木製の玩具を作ってみたいという思いがより深まった。そして、大人の持つ木製の玩具の教育的なイメージや優良・健全なイメージのみによって、玩具本来の遊びの要素を曖昧にしてしまってはならないと思つた。今回、子どもの遊びの欲求を誘発する要素を見いだし、玩具の試作へと結びつけることができたが、試作に終わってしまったことは残念である。はたして、今回試作した玩具がどのように子どもたちに受け入れられるのか、子どもたちの評価を得なければならない。そして、今回の研究をさらに深めるためにも、今後も玩具づくりに関わっていきたいと思う。

5. 参考文献
 日本レクリエーション協会,「遊びの大事典」,東京書籍, 1989
A・フレイザー,和久洋三訳,「おもちゃの文化史」,玉川大学出版部 1980
野上暁「おもちゃと滋び」現代書館 1991
芸術教育研究所 おもちゃ美術館「おかあさんにすすめるおもちゃ200」
「ウッデイハンズNo.7木のおもちゃをつくる」パッチワーク通信社 1997
「手作り木工事典No.31」婦人生活社 1997