3.研究の概要
 第1章では、本研究におけるイメージの意味について確認した後、イメージ化における絵と言葉の関係についての先行研究を簡単に取り上げた。これらの先行研究では、子どもの言葉の記憶や作話、物語理解は、言葉は絵を伴うことによってより促進されることが明らかにされていた。
 第2章では、まず、国語教科書の物語において、捧絵がどのような役割を果たしているのか、物語文と挿絵の関係から検討した。国語教科書の物語において挿絵のないものはない。また、学年が上がるにつれて文字数が増えていくのに対して、挿絵の数は減っている。これらのことから、挿絵は物語のイメージ化を助けるという役割を果たしている。また、年齢が上がるにつれて物語文からのイメージ化がより容易にできるようになるということが考えられる。

 このことをふまえて、次に梅絵の相違がイメージ化に及ぼす効果について検討した。複数の出版社で共適している物語は、物語文は同じであるが挿絵が異なるものが多く見受けられた。そしてそれらは、描いてある物語場面は同じであっても、色使いや登場人物の表情など表現上の相違から受ける印象が随分異なることがわかる。子どもが挿絵を物語のイメージ化の拠り所にしているならば、挿絵の相違によってイメージが異なることが考えられる。

 第3章では、国語教科書の物語のイメージ化について、小学校1、2年生を対ゑにした子どもの実態調査を実施し、以上の とをより明確にしようと試みた。
 調査1では、子どもは物語文からでも 語をイメージ化することはできるが、挿絵をその拠り所とすることによってより容易にイメージ化することができるということが明らかにされた。一方で、子どもたちは教科書の挿絵にあまり違和感を抱かずに受け入れており、このことから挿絵がイメージを固定化しているということが考えられる。また、挿絵の大きさと位置関係の相違がイメージ化に及ぼす影響については明確な結論を導き出すことはできなかったが、挿絵は大きいほどいいというものではなく、また物語のイメージ化を助けるという役割と共に、子どもの興味・関心を引きつけ、学習意欲を喚起するという効果もあることが考えられる。
 調査2では、物語文からイメージ化したものを絵に表したものを分析、集計した。この結果から、子どもたちは物語文から自分なりのイメージ化を行つているが、それは物語の世界を正確に捉えられているというものではなく、イメージ化において挿絵がそれを助けているものであると言える。また、表現の異なる6種類の挿絵を与えて、イメージ化における物語文と挿絵の関係について調査した結果、子どもは絵の中に、自分が物語文からイメージしたものが再現されている部分に着目していることが明らかになった。またこの調査の結果からも、挿絵がイメージを固定化していることがわかった</p>

4まとめ 
 子どもは、物語という虚構の世界を物語文からイメージ化し、挿絵をその拠り所とすることによってより容易にイメージ化していることがわかった。しかし一方で挿絵はイメージを固定化するものであるから、糟絵の相違がイメージの相違を生むということが考えられる。挿絵は物語を肉付けし、具象化し、想像を豊かにするのに役立つが、一方では話を固定し、限定する。物語は時間の流れの中に展開されるドラマであるから、挿絵も時間の流れとともに展開されなければならない。したがって、挿絵が物語の世界を正確に表現し、かつ物語場面に沿つて適切に与えられるとき、子どもの視覚的イメージは高まるものであると考える。

5.今後の課題
 今回の調査では調査対象を低学年に設定したのだが、子どもの年齢が上がるにつれて物語のイメージ化における挿絵の役割は変化していくものなのかどうか、というところまでは明らかにすることはできなかった。子どものイメージ化における絵と言葉の関係について、研究をより深いものにするためには、対象学年や対象人数を広げる必要がある。また調査対象の子どもをグループに分け、それぞれに異なる籍絵の同一の物語を与えて、そこからイメージ化されたものを分析し、挿絵の相違によってイメージも異なるものなのかどうかなど、調査の方法を改善し、発展させて研究を続けていきたい。

参考文献
省略