中 学 校 美 術 科 学 習 指 導 案
〈
1時間 〉
平成17年5月27日(金)5限 13:20~14:20
2学年 美術科
場所 大阪市立大淀中学校 2階 図書室
指導者 美術教諭 村部京子
1 題材名 鑑賞 「ラス・メニーナスの不思議」
バロック美術の巨匠ベラスケスの傑作にせまる
2 題材設定の理由
精神的にも自我の目覚めや、客観的な洞察力が成長しつつある中学生だが、なかなか自ら進んで、美術館に出向いて作品を見たり、図書館やインターネットで調べたりする機会はあまりない。しかし、豊かな感性をはぐくむべきこの時期に、素晴らしい芸術作品と出会うことは、新鮮な感動や作品の理解を深めるのに大切な体験であると言える。
ラス・メニーナス(日本語訳・宮廷の女官達)はバロック美術の巨匠ベラスケスが宮廷の様子を、生き生きと美しく描いた傑作であるが、絵の中に数多く隠された作者の意図が、謎を呼ぶ不思議な作品である。作者の意図や、この絵が描かれた時代背景などを調べ、自分の意見をまとめることで作品の理解を深める。
中学生の発達課題の観点からも、鑑賞の活動は重要な活動であり、また生涯学習の観点からも、生涯にわたって美術を愛好する習慣を育てることができる。本題材は図書室でパソコンやビデオを使って鑑賞し、資料集の写真を見たあとワークシートを完成させる。作品を理解し、鑑賞後は感動や気持ちを文章にまとめたり、クラスで発表しあい自分の考えを深める。
3 題材の目標
@ ワークシートを通して作品への理解を深めさせる。
A「ラス・メニーナス」は17世紀のスペイン宮廷での日常生活をさりげなく描いている。この作品には多くの謎が隠されていた。この作品を鑑賞することで、時代背景や、絵に隠された
作者の心情や、制作意図、創造的な表現の工夫を感じ取り、そのよさや美しさを深く味わうこ とができる。
B 作品の鑑賞を文章にまとめたり、お互いの考えを発表しあう。
4 生徒観
2年生の美術の授業時間は、必修授業の週1時間と生徒による選択授業の1時間である。本題材は必修授業の1時間で行った。美術の授業では、1年生の最初から必ず本授業のために事前学習・事後学習として宿題を出している。提出率はとても良く、期待以上の内容であることが多い。
授業ではプリント類と、平面の作品をファイルに綴じ、自己評価表を毎回必ず書いている。生徒は明るく元気いっぱいだが、授業態度はまじめで、熱心に美術の授業に取り組んでいる。中学生らしく、いろいろなことに興味を持ち、美しい作品を見せると素直に驚いたり感動している。
5 準備
生徒・・・美術資料、ノート、筆記用具
教師・・・パソコン、プロジェクター、スクリーン、ビデオデッキ、
ビデオ「世界・美の旅 ベラスケス~素顔の宮廷画家~」
ワークシート、大鏡、登場人物のペープサート、メモ用紙
6 評価の規準
@鑑賞する喜びを味わい、作品や作者、美術文化や歴史などに興味を持ち自ら調べ、意欲的に鑑賞することができる。
A参考作品から作品を鑑賞し、「ラス・メニーナス」の不思議にせまることができる。
B感性や想像力を働かせて自分の価値観を大切にし、よさや美しさなど感じとって味わうことができる。
C作者の心情、創造力の豊かさと美術とのかかわりなどを感じ取ることができる。
7 指導計画 (1時間 )
@「ラス・メニーナス」との出会い・・・絵画を見る
A意見交換とワークシート制作
B調査と発見
8 学習の展開 (50分 ) 場所・・・図書室
学習の流れ |
授業形態 |
主 題 |
学習内容と指導の留意点 |
事前学習 |
宿 題 |
前時の授業の終わりに、次の授業の準備として、宿題プリントを配る。 |
・プリント「ラス・メニーナスってなんだ ろう」を配って次回の授業までに家庭で よく読んでおくように指導する。(宿題) |
授業 前半 20分 |
一斉授業 |
「ラス・メニーナス」を見る |
・ビデオ「世界・美の旅 ベラスケス~素 顔の宮廷画家~」30分のうちラス・メ ニーナスの部分を見る。10分 ・パソコンで、インターネットに接続し、 プロジェクターで映し出した画像を見せ ながら説明する。5分 ・大鏡の前に立ち、教師が絵の中のベラス ケスの位置を確認、その後生徒たちで、 残りの登場人物のペープサートを持ちな がら立つ位置を確認する。5分 |
後半 30分 |
グループ 学習 |
意見交換・メモを取り、ワークシートを制作する。 |
・資料@「美術資料 p161」 A プリント「ラス・メニーナスって なんだろう」 を参考にしながら班(5~6名の6班) で話し合う。 ・話し合った意見や感想を、各自まとめ、 メモを取る。自分の考えがまとまったら、 ワークシートを問いにしたがって書いていく。 |
事後学習 |
宿 題 |
ワークシートの完成 |
より詳しく、深く知るために資料集やプリントを見直すとともに、図書室やインターネットで調べて、完成させるよう指導する。 |
9 授業のための資料
機器・資料 |
詳 細 |
パソコン「インターネット」 |
インターネット美術館(http://www2.edu.ipa.go.jp/g2/h-inb1/h-bar/h-val/h-va12.jpg)ラス・メニーナス画像 |
サルヴァスタイル美術館(http://www.salvastyle.com/menu_baroque/velazquez_lasmeninas.html)ディエゴ・ベラスケス−ラス・メニーナス(女官たち) |
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ビデオデッキ ビデオ |
「世界・美の旅」ベラスケス~素顔の宮廷画家~ テレビ東京(日経映像) |
プリント |
「ラス・メニーナスってなんだろう」 |
ワークシート |
ラス・メニーナスの不思議1,2,3 |
美術資料 |
美術資料 p161 株式会社 秀学社 日本文教出版編集部・京都芸大美術教育研究会 |
10
学習の成果と今後の展望
@「ラス・メニーナス」を鑑賞しその表現方法や、発想の仕方、時代背景や知識などを学び取った。 A「ラス・メニーナス」は17世紀のスペイン宮廷での日常生活をさりげなく描いている。この作品には多くの謎が隠されていた。1つ1つの謎を解き明かすことで、この作品を深く知ることができた。
B「ラス・メニーナス」から発展して、美術文化や歴史などに興味を持ち、自ら調べ意欲的に鑑賞することが出来た。バロック美術や歴史、作者や作品に対して関心を持ち、好奇心を育てることができた。
C感性や想像力を働かせて、自分の見方や感じ方で、などを感じ取り、よさや美しさなどを感じ取 って味わうことが出来た。
D友達同士で、意見を交わし、自分の意見を発表することで、作者の心情、想像力の豊かさと美術とのかかわりなどを感じとることができた。
E本物の絵画を時間をかけてじっくり見たいという生徒が増えた。今後も美術科から提案し、学年の取り組みで、美術館やギャラリーなどへ、鑑賞に出かける機会をできるかぎり作って行きたい。
バロック美術「ラス・メニナスの不思議」に関わる評価規準
B.鑑 賞
第2学年 1時間 題材名「ラス・メニーナスの不思議」 ベラスケス 宮廷の侍女たち (学習指導要領 B鑑賞) 題材の目標 バロック美術の巨匠ベラスケスの代表作品「ラス・メニーナス」に焦点を当て、時代背景や作者の心情、制作意図、創造的な表現の工夫などを感じ取り、そのよさや美しさを深く味わうことができる。 |
内容のまとまりごとの評価規準 |
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B鑑賞 |
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美術への関心・意欲・態度 |
鑑賞の能力 |
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◯鑑賞する喜びを味わい、作品や作者、美術文化や歴史などに興味を持ち自ら調べ、意欲的に鑑賞することができる。 |
◯参考資料から作品を鑑賞し「ラス・メニーナス」の不思議にせまることができる。 ◯感性や想像力を働かせて自分の価値観を大切にし、よさや美しさなど感じ取って味わうことができる。 ◯作者の心情、創造力の豊かさと美術とのかかわりなどを感じ取ることができる。 |
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題 材 の 評 価 規 準 |
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◯「ラス・メニーナス」の鑑 賞を通して、作品や作者、バロック美術や歴史に対して関心や好奇心を育てることができる。 |
◯ベラスケス独自の明暗の処理、光線の表現、遠近法、彩色法や装飾法を生かした宮廷の肖像画について、その独自の美意識や創造的精神を理解し、自分の価値観を持って作品の良さや美しさを味わうことができる。 |
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時間 |
ねらい・学習活動 |
単 位 時 間 の 評 価 規 準 |
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1 |
l ラス・メニーナスに代表されるバロック美術の作品に見られる表現方法、表現形式のよさや美しさ、意図と工夫を理解することができる。 (自作プリント・図書資料) l 西洋美術の中でも伝統的なバロック美術の美意識や文化を理解した上で、ベラスケスのラス・メニーナスについて自分の価値観をもって作品の良さを味わうことができる。 |
➀作品の美意識や創造的精神に関心を持ちながら鑑賞を楽しむことができる。 Aとするキーワード 意欲的に感じ取る 観察・発言・ワークシート (一時間を通じてよい面をとらえ評価する。) |
➀ラス・メニーナスに見られる表現方法、表現形式のよさや美しさを味わうことができる。 Aとするキーワード ・表現効果の理解 発言・ワークシート A技術や技法、制作の意図や工夫、独自の美意識や創造的精神などを理解し自分の価値観を持って作品、作者についてまとめることができる。 Aとするキーワード 幅広い視点を持って深く味わうことができる。 ワークシート・テストの結果から見る。 |
「ラス・メニナス」の不思議観点別評価について
1 単位時間の評価規準において
ABCで評価したものを点数化し、観点ごとに合計をし、総得点を求める。総得点を基にABCを決め、本題材における観点別評価とする。
2 美術への関心・意欲・態度の評価について
○本題材は1時間の指導計画で行っているため、評価する配点を3点とし、
Aを3点 Bを2点 Cを1点とする。
○1時間をとおして一つの観点で評価するため、結果的に上記の評価がそのまま本題材での「美術への関心・意欲・態度」の評価となっている。
○本事例のような鑑賞の授業の場合、意見発表の場面で積極的に発言はしないが、意欲の高い生徒がいることも考えられるので作品を鑑賞するときや、指導者や友達の話を聞く場面での態度や表情、またワークシートへの記述などから総合的にとらえ、よい面を積極的に評価することにする。
○授業の前半と後半の2回評価の場面を設け、授業中の発言や、ワークシートを授業後に評価するようにし、配点を前半3点、後半6点とする。前半と後半の配点に軽重をつけた理由は、後半で示した単位時間の評価基準は、前半でしめした観賞能力があってはじめて実現されるものであり、前半の時点で十分な鑑賞の能力が発揮できなくても後半の時点で十分な鑑賞能力が発揮された生徒は、本題材での評価規準を満たしていると考えられるため、後半に重きを置く。
3 観賞能力の評価規準表
鑑 賞 の 能 力 |
||
・参考資料の作品を鑑賞し、バロック美術の特徴をつかむことができる。 ・巨匠ベラスケスの代表作「ラス・メニーナス」を鑑賞し、その表現方法や、発想の仕方、時代背 景や知識などを学び取り、その表現のよさや美しさなどを感じ取り味わうことができる。 ・感性や想像力を働かせて、自分の見方や感じ方で作者の心情や意図と表現の工夫、よさや美しさ などを感じ取ることができる。 |
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十分満足できる(A) |
おおむね満足できる(B) |
努力を要する(C) |
バロック美術、ベラスケスの作品、「ラス・メニーナス」の魅力に惹かれて、参考資料だけでなく、図書館やインターネットなどで資料を探しながら調べ、ワークシートを仕上げることができる。 |
バロック美術について興味を持ち、配布された参考資料を見て調べることができる。 「ラス・メニーナス」の特徴をつかもうとじっくり鑑賞することができる。 |
興味がわかず、ただ参考資料を眺めている。鑑賞はしているが、特徴をつかむことができない。 |
「ラス・メニーナス」のよさや美しさを十分に味わうことができる。ベラスケスについて積極的に資料を探し、作品の鑑賞とともにその人物像を探ることができる。 |
「ラス・メニーナス」のよさや美しさを味わうことができる。 ベラスケスについて資料を探して調べることができる。 |
「ラス・メニーナス」のよさや美しさが味わうことができない。 ベラスケスについて人物像を探ることができない。 |
4 観点別学習状況の評価への換算について
^ 総得点の配点が3点の観点:
3点をA、2点をB、1点をCとした。
_ 総得点の配点が9点の観点: 7点以上をA、5・6点をB、
4点以上をCとする。
観点 |
美術への関心・意欲・態度 |
鑑賞の能力 |
|||||
氏名 |
評価の場面 |
評価 |
評価の場面 |
評価 |
|||
➀ |
総得点 |
A…3点 B…2点 C… 1点 |
➀ |
➁ |
総得点 |
A…7点以上 B…5・6点 C…4点以上 |
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配点3 |
3 |
配点3 |
配点6 |
9 |
|||
あ |
2 |
2 |
B |
1 |
3 |
4 |
C |
い |
2 |
2 |
B |
2 |
3 |
5 |
B |
う |
3 |
3 |
A |
3 |
6 |
9 |
A |
え |
3 |
3 |
A |
2 |
5 |
7 |
A |
お |
1 |
1 |
C |
1 |
2 |
3 |
C |
か |
3 |
3 |
A |
2 |
4 |
6 |
B |
… |
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