第32回 InSEA(国際美術教育学会)世界大会2008 in 大阪 開催に向けて

InSEA World Council 評議員 世界大会実行委員長 福本謹一

InSEA=International Society for Education through Art(国際美術教育学会)は、1954年にユネスコ美術教育セミナーを受けて組織されたものですが、その名称の由来は、英国のサー・ハーバート・リードの著書『美術を通しての教育』です。InSEAは、1900年に発足した美術教育連合(Federation of Education for Art)を母体として、3年毎の世界会議(World Congress)の他に、ヨーロッパ、アジア等の地区会議を開催し、国際的な美術教育研究・実践の交流機会を提供して今日に至っています。日本でのInSEA関連会議としては、1965年に東京において常陸の宮殿下御臨席のもと当時名誉会長であったハーバート・リード氏他多数の美術教育者が集って国際美術教育会議が開かれました。また1998年には、InSEAアジア地区会議東京大会が開かれています。2008年の大会は、FEAの第1回パリ会議から起算して32回目を迎えることになります。 1965年の東京における国際会議の開会挨拶でハーバート・リード氏は「人類を悲劇的結末へと押しやる潮の流れから、自らを救い出す唯一の道は、手を使う技術や感覚的識別の手順を伴う、あのさまざまな活動にもどることであります。こうした活動は本質的に美学的な過程ですから、教育は感覚面の教育、即ち『美術を通しての教育』に集中しなければならないというのが、われわれの主張のすべてであります」と述べました。21世紀においても、世界はテロをはじめとした紛争や環境問題などにより混迷を深める一方です。こうした国際状況の中で芸術活動のもつ意味を再考し、芸術教育が子ども達の未来に貢献する先導的な役割を担うべきものであるとの認識を新たにする必要があると考えます。

● 大会テーマ
こころ+メディア+伝統

●公式ホームページhttp://www.convention-j.com/InSEA-WC2008osaka/ja/

●主催 第32回InSEA(国際美術教育学会)世界大会2008in大阪組織委員会

●共催 日本美術教育連合(InSEA Japan) 美術科教育学会 日本美術教育学会 全国造形教育連盟 日本教育美術連盟

●InSEA世界会議の開催場所
大阪国際交流センター

●開催時期
平成20年(2008年)8月5日(火)〜9日(土)

●大会会長ご挨拶「今こそ、国境を越えて美と調和の教育を」
第32回InSEA世界大会2008in大阪・大会会長
平 山 郁 夫(東京藝術大学学長・日本画家)

この度、国際美術教育学会(InSEA)世界会議日本大会2008の会長に就任することになりました。美術教育の国際交流と発展に尽力申し上げたいと願っております。
近年、私は各国の文化を積極的に守るように、国連を初めいろいろな方面に働きかけてまいりました。時として紛争のさなかにも世界中のいろいろな場所を訪ね、文化財の保護や文化の国際交流を行い、様々な世界会議へも積極的に関わってきました。
それは、芸術や文化こそが世界中の人々が手を取りあっていくための、最も大切な紐帯であるとの私の信念に基づいています。先の大戦中でも古都フィレンツェ攻撃をドイツ軍に断念させたのは文化に対する尊敬の思いでありましたし、UNESCOの「世界遺産」はそれぞれの地域の文化遺産を世界中で守っていこうとする私たちの思いを表現していると言えるでしょう。高句麗の遺跡が世界遺産になることで、私たち日本人は様々な障壁を越えて朝鮮の人々との絆を深く理解できるのです。UNESCO と浅からぬ関係にあるInSEAの場で、世界中の美術教育者が相互理解を深めることは、まことに大いなる意義があると申せましょう。
私たちが携わっている美の世界は未来を開いていくものでもあり、時として美は憎しみや悲しみの泥の中から蓮の花を開かせるような力を持っています。未来を託す子ども達への教育には、とりわけ美の教育が大切です。伝統的な美と新しい美。子どもたちの生活や感情の奥底にそれぞれの美を根付かせることが、今ほど求められている時代はないでしょう。美の文化はどの国においても、その国民一人一人の人格の基礎をつくっているものですから、美の教育は偏狭なものであってはなりません。そのために図工科や美術科は、他の教科と力を合わせて子どもの感性に働きかける必要もあるでしょうし、自由に表現することと同時に、しっかりと鑑賞することも大切になってきます。美術の先生や研究者の方々がこのような広く調和的な教育の視野を持つことは、迂遠なようですが、子どもたちの未来の生を、そして世界を、調和に満ちたものに変革する力へ連なっていると信じております。この機会を生かして美術教育に携わっておられる多くの皆さまが、世界の美術教育者たちとともに視野を広げ、連帯し、美と調和の教育を探究されることを心から祈念するものです。

●大会の中核的イベントと国際交流

 

従来のInSEAの大会は、学会に準じた性格からシンポジウムを除けば個人研究発表が中心ですが、2008年の大会では、理論と実践の両面から美術教育交流を図れるよう日本の美術教育関連学会及び美術教育実践団体との連携を考えたものによって国際交流のより実践的なあり方を討議すると同時に、美術以外の芸術教育との関連を検討することも課題としています。
個人研究発表は、以下のようなテーマに沿うものが考えられます。
アジアからの発信
メディアと芸術
漫画・若者文化・視覚文化(ビジュアルカルチャー)と美術教育
国際理解と美術教育美術館教育
伝統文化と学校教育における美術
芸術教育とカリキュラム