礼智院- 韓国の伝統衣装と礼儀作法

(1)概要

1974年にオープンした韓国の伝統・文化の教育を行っている施設である。礼智院が設立された目的は、① 韓国の固有な伝統文化を継承し生活に根付かせせることで、国家観の確立と民族的な主体意識を養う② 女性の指導力をのばして社会の寄与度を高める③ 伝統文化を海外に紹介する国家間の理解と親善を図ることにある。

(2)具体的な事業活動

民族衣装であるチマチョゴリ・パジチョゴリを着て立ち振る舞いなどの作法(衣装礼節)を教授し、茶道教室、伝統食卓礼節やキムチのゼミナール、国際親善交流など広い範囲に及んでいる。
団員は、韓国伝統衣装のチマチョゴリ( 女性) とパジチョゴリ( 男性) の着付けを体験し、韓国の礼儀作法を研修した。また、院長や着付けの先生から現在の韓国の伝統文化や礼儀作法について示唆に富む話を伺うことができた。
韓服は韓国の伝統衣装として優雅で品のある服飾であったが、近代化の過程を経ながらだんだんと洋服に取って代わられ、今では特別な時に着るものとして位置付けられている。女性は短いチョゴリ(ジャケット風の上着)とチマ( ゆったりした線が特徴のスカート)を合わせて着たり、男性はチョゴリにパジ( ズボン) を履き、マゴジャ( 上着) などを合わせたりする。
韓服の種類は身分と技能、性別や年齢により使われる素材や色などが区別される。しかし、礼服としての意味合いが強くなった今日では、用途上の区別が優先されるようになった。生活風習による用途上の韓服としては、婚礼をはじめ、還暦、1 歳の誕生日、また年中の伝統行事などに区分できる。また、お正月やお祭りなどの特別な日には、襟を正して迎える挨拶の仕方があるようである。女性は、両手を重ねるときに右手が上で、親指を重ねる。男性は左手が上であるが、お葬式のときは反対になるそうである。相手が座っているときには、自分も座って額が床につくまで、礼儀作法の体験深く頭を下げるのは丁寧な挨拶であると思われる。

( 3) 姜映淑院長の講話(抜粋)

「礼智院は創設35年。私は、以前はK B S のアナウンサーであった。その後、M B S へ移籍した。女性で初の解説者やアナウンス室長となった。1964年には、オリンピックの中継アナウンサーとして東京へ行った。4 名のうち3 名は男性であった。当時、N H K のアナウンサー宮田輝氏が、我々の研修を行った。韓国から来た我々は、「つ」、「ざ」の発音ができなかった。できなかったら帰国せよという厳しい研修であったので、死に物狂いで研修した。美空ひばりの発音は素晴らしいので、それを聞きながら真似をして発音練習し、合格することができた。( 中略) 私は、日本が大好きである。息子は、早稲田大学に進学した。そこで、息子はたくあんの由来を知り、私に『たくあんって、どうしてそう言うか知ってる?』と質問した。( 息子がたくあんの名前の由来を教えてくれた。) 観光客に、その食べ物の由来を説明できることが食文化だと思う。そして、伝統とは、自分の国の骨である。

( 4)安玉珠先生の話( 衣装の講師、かつて教科部に勤務)

「初等学校では、作法の授業がある。幼稚園にもある。各学校には礼儀室が一つずつある。人が成長するために学ぶべきこととして伝統的な作法をとらえている。道徳の授業から始まったものであるが、宗教教育とはとらえていない。伝統教育ととらえている。そのための先生が一人配置されている。また、お母さんの中から『名誉教師』という協力者を募って指導していただいている。そのような活動には、政府からの支援もある。学校と家庭の連携については、国民も協力的である。周りの子が良くなれば自分の子も良くなると考え、協力していただける方がいる。」

( 5) 考察

伝統文化の型を学ぶことを通して、家庭教育や社会秩序やルール、忍耐力や思いやりの心を親から子どもへと伝承することができると思う。伝統や文化の継承とは、形骸化した様式を受け継ぐのではなく、人間の心の伝承であると強く感じた。さらに、自分の家の文化、国家の文化を知ってこそ、他の国へ行っても自信が持てるし、他国の文化を尊重できることを改めて確信した研修であった。
参考文献・資料: 韓国観光公社公式サイトhttp://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/